最近は能町みね子にはまっていて、立て続けに何冊か読みました。

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能町みね子の魅力は「ちょっと暗い」ところです。文章や絵は一見気楽なのに、そこにはいつも少し暗さが漂っています。

『ひとりごはんの背中』(講談社)では持病「ポジティブあたり」(ポジティブな人に会うと抑鬱感や偏頭痛をおこすこと)になったり、『逃北 つかれたときは北へ逃げます』(文藝春秋)では寂しい北国を訪れて「やわらかいあきらめのような気持ち」を感じたりしています。

能町さん、ちょっと陰気…。でも、そこがいい。暗さを作品に昇華し、時には笑いにしています。

そして能町さんの作品で最も好きな本がこちら。

『ときめかない日記』(幻冬舎文庫)

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こちらは26歳のOLを主人公にした恋愛マンガです。
が、タイトルの通り「ときめき」は全くない恋愛マンガになっています。当然、運命的な出会いも恋愛の高揚感も一切なし。
あるのは痛々しい現実だけです。

主人公は「年齢=彼氏いない歴」のOL・めい子。26歳の今まで誰とも付き合ったことがなく、このままでは一生処女かもしれないと悩んでいます。

いつも他人と比べてしまうめい子。コンプレックスの塊のような彼女は焦る気持ちばかりが先行し、迷走していきます。

めい子は「とりあえずセックスだけはしなければ、それをすれば何かが変わる」と思いこみ、出会い系サイトに登録したり不倫に走ったりします。

当然うまくいくはずもなく、もやもやを抱えたまま物語は進行します。

結末は読んで欲しいので詳しくは伏せますが、めい子が少しだけ前に進むような感じで終わります。が、読後感は爽快とは言い難く、もやもやばかりが残ります。

でも、ハッピーエンドの物語より、よっぽど現実的な結末をむかえます。未解決なものが沢山のこりますが、それでも世の中は続いていく感じがリアルで、僕はそこに好感を抱きます。

読書の秋。ちょっと変わった能町ワールドなんていかがでしょうか。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は10月12日です。

読んで頂きありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2015-10-05 10:19 | 能町みね子 | Comments(1)

出演コンサートのご案内から。
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【紀尾井のようこそ、邦楽!2015 和楽器をやってみよう】
日時 平成27年8月23日(日) 12:30開場/13:00開演
構成 13:00~14:30 ワークショップ(和楽器体験、水道管尺八作り、スランプラリー)
    15:00~16:00 和楽器オーケストラあいおいによるコンサート
    (コンサートのみの観覧も可能です)
料金 小中高生1000円/大人2000円/親子セット券2500円
問合せ・ご応募は紀尾井ホールHPからどうぞ

親子で楽しめる体験型イベントです。
和楽器体験は箏・尺八・小鼓・篠笛・三味線・薩摩琵琶と沢山の楽器を全て体験できます。
(こんなに和楽器が揃っている機会は貴重です。しかも演奏家が直に教えてくれます!)
夏休みの思い出にもなること間違いなしのイベントです。ご参加をお待ちしています。

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では、このブログの特別企画「オススメ本を教えて下さい」の第3回目です。

『たろちゃん(「僕とポーク」より)』ほしよりこ/著(マガジンハウス)
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ほしよりこの描く「不器用だけど優しい人」が好きです。
出世作の『今日の猫村さん』で言えばスケ番の尾仁子がそうだし、今回すすめて頂いた『たろちゃん』で言えば、主人公のたろちゃんのお父さんがそうです。

『たろちゃん』で描かれているお父さんは現代的な「パパ」ではなく、昔気質な「お父さん」として登場します。
一本気でちょっと亭主関白、でも不器用で本当は優しい。そんなお父さんです。

この漫画のあらすじは、たろちゃん(4歳)がインターネットが欲しいと駄々をこね、それに家族が巻き込まれていく、というお話です。

インターネット(パソコン)をねだるたろちゃんですが、お父さんの反応は好ましくありません。
『ペタンと薄くなる12万円のもんなんか必要ねえんだ!』(17ページ)
とお父さんに叱られてしまいます。

インターネットを否定的に見ているお父さんですが、その後、周囲からインターネットの事を聞くにつれて徐々に興味を持つようになります。

そこから先は実際に読んで欲しいので省きますが、物語の結末には「あったかい、すれ違い」があります。

頑固だったお父さんはインターネットを知るにつれ、欲しいと思うようになります。
でも一方で肝心のたろちゃんは、インターネットより大切なものを手に入れています。

すれ違ってしまうお父さんとたろちゃんですが、そこには暖かな家族の風景があります。
『たろがよ、本当に欲しがってるし』(70ページ)とついつい前置きしてしまうお父さん。
その不器用さが微笑ましく暖かです。

優しい気持ちになれる一冊です。

本書を教えて頂き、ありがとうございました。

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今週はこれにて以上です。

このブログは毎週月曜日に更新。
次回は6月22日で、『神々の山嶺』夢枕獏/著(集英社)の感想を投稿します。

読んで頂きありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2015-06-15 00:01 | ほしよりこ | Comments(0)

僕が週1回ぐらいで行く近所の花屋さん「NECO QAVREENO」。


花を買って家に飾るきっかけを作ってくれた花屋さんです。

店主は30代の男性で僕と年齢が近い事もあり、お店に寄るとつい無駄話してしまいます。(話だけして帰ることもあったりします…)

お店には花への優しさとあったかさがあって、店主とお話をするたびにいつも元気をもらってます。

花を買って飾る。
…というと、ちょっと気恥ずかしい感じがするかもしれませんが(特に男の人は…)、でも試しで良いので花を一輪買ってみて欲しいです。

花を飾るだけで部屋の雰囲気って変わったりします。

自分の為に花を買うっていうのも何か良くないですか?

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益田ミリ「すーちゃん」(幻冬舎文庫)

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思い返せば45年前に図書館通いを始めた頃に出会った本です。

この作品は小説ではなく漫画です。

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こんな画風です。

カフェで働く30代独身のすーちゃん。その日常を描いた漫画です。
職場で淡い恋をしたり、たまに健康志向に凝ったり、老人ホームの広告に「高い」とため息ついたり…。
すーちゃんはどこにでもいるような普通の女性です。
幸せそうな友達とつい比較して、自分の将来は大丈夫か、このままでいいのだろうかと、いつも立ち止まって悩んでいます。


『自分が幸せだと思えばそれでいいって頭の中ではわかっている。

だけど他人からも幸せそうに見られないと不安という気持ちもわかる。』

幸せって比べることは難しいし、自己本位で良いと思うけど、他人と比べると中々納得できないんですよね。

どうしても他人が羨ましく思えてしまう、そんな気持ちよく分かります。

すーちゃんはそういう自分の矛盾や嫌なところを一旦認めて引き受けて、それでも前に進んでいきます。

『あたしって嫌な人間? 違う。
嫌なとこがあっていいとこもある

(中略)
いろいろいてそれがあたしという人間』

変わりたい、でも変われないと悩むすーちゃんの姿はきっと沢山の人が経験してることじゃないかなと思います。なるべく人を嫌いにならないようにとか、嘘をつかないようにとか。
自分の嫌な部分や小さな嘘を真面目すぎる位に考えるすーちゃんを見てると「そういう真面目さもすーちゃんの良い所だよ。だから大丈夫、頑張れ~」と、勝手に応援してしまいます…。

ちょっとしんみり来て、少し泣けます。

疲れたときに読みたくなる、そんな漫画です。


今日はこれにて以上です。

毎週月曜日に更新。次回は8月11日です。

読んで頂きありがとうございました。


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by mamesyakuhachi | 2014-08-04 19:11 | 益田ミリ | Comments(0)

なんかワンダーランドというか、ちょっと不思議な世界だなって思う本に惹かれます。

さくらももこ「神のちから」(小学館)

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独特な漫画です。短編20話。
とにかくシュールです。
頭が壺になった男、ヘソにすいこまれる話、世界はみんな西山になる・・・
取り留めない系、オチがない系、妄想系です。

理不尽も滅茶苦茶も、神様の力…なんでしょうかね。

定期的にこんな本を読みたくなります。


吉本ばなな「アムリタ」(新潮社)

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吉本ばななは文章が不思議な印象です。
読んでると引き込まれるんですが、読むのを一旦やめると、しばらく放置してしまいます。

文章は宙に浮いたような、雲を掴むような、そんな感じがします。

内容は恋愛小説ではっきりとした展開もあるし、会話も成立してるのに、なんとなく色が薄く、サラサラ、フワフワした印象です。

不思議で魅力的な作品だと思います。


今日はこれにて以上です。

毎週月曜日に更新。次回は1月27日です。

読んで頂きありがとうございました。
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by mamesyakuhachi | 2014-01-20 22:41 | 複数著者など | Comments(0)

『Sunny』松本大洋/著

あけましておめでとうございます。

今日の音楽はスピッツ「夜を駆ける」です。


年末は紅白も、ゆく年くる年も見ずに寝てました。

餅好きなんですが、今年はまだ殆ど食べてません。

今年は初詣をしたぐらいであまり正月らしいことはしてないです。

新春のお仕事で「春の海」を吹いたぐらいでしょうか。

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新年最初の本の紹介です。

年末にEGO-WRAPPIN'つながりで知り合った方から教えてもらった漫画です。

松本大洋「Sunny」(小学館 IKKI COMIX)

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児童養護施設「星の子学園」を舞台にした漫画です。

子供達の気持ちを丁寧に描写しています。

この作品の登場人物で僕が一番好きなのは第一話で施設にやってくる静(せい)です。

静はすぐに親が迎えに来てくれるだろうと考えていますが、そんな静に同じ施設に預けられている春男は「お前捨てらんたんやぞ」と言います。

寡黙な静は厳しい現実を受け入れながらも、やはり心のどこかで迎えに来てくれることを願っています。そして辛らつな言葉を言った春男も、同じように親が迎えに来てくれることを心の中で祈っています。「お前捨てられたんやぞ」と静に言う春男も、同じく行き場のない気持ちを抱えています。

二巻で新しく施設にやってくる男の子、透君。静は透と仲良くなります。
静は透も自分と同じように捨てられて、親は迎えに来ないだろうと思っています。
そこから来る仲間意識、同情心から静は透の世話を焼きます。
しかしながら、あっけなく透の親は向えに来ます。

透の幸せを考えれば一番良いことですが、でも静は素直に喜べない部分も感じています。

静の複雑な心境は、作品の中で言葉で語られたりしませんが、その代わりに静の表情や、最後のページで石段に腰掛けている佇まいから感じることができます。

この漫画の良いところは、子供達の自由な発想や想像が、子供達自身の傷を癒し、そして沢山の世界を自由に行き来しているところです。

施設の庭の片隅に もう動かない日産Sunny1200が置かれています。
その中は大人の入れない子供たちだけの空間です。

子供達は動かない車の中で自由なイメージの世界を駆けて行きます。



今日はこの辺で以上です。

更新は毎週月曜日。次回は1月13日です。

読んで頂きありがとうございました。
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by mamesyakuhachi | 2014-01-06 13:11 | 松本大洋 | Comments(0)