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毎年夏になると文庫フェアの季節がやってきます。

んで、毎年買ってしまうのが夏目漱石「こころ」です。

どうして買うかっていうと、3つ理由があって

1、カバーが期間限定のプレミアムカバーで綺麗だから
2、夏目漱石を読む俺、という姿に憧れるから
3、読まなくても、人にあげるだけで知的そうに見えるから

という、まーほんとどうしようもない理由なんすよね。

そもそも、買っても読むことはあんまりない。

(ちなみには去年はなんとか読んで、人にあげました。一昨年は読まずに古本屋に売りました。)

今年は読むかっていうと、どうだろう。

だって、この小説「Kは先生に裏切られたから自殺した」っていう話じゃないんですよね?

俺はそれ以上の解釈できる自信がないっすよ。



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by mamesyakuhachi | 2017-07-31 00:01 | 夏目漱石 | Comments(0)

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「劇場」又吉直樹(新潮社)

5月11日に発売された又吉直樹の新作「劇場」読みました~。
面白かったです。泣きました。……電車で。

この小説は著者の実体験を下地にしたフィクションで、恋愛小説になっています。

劇団員の主人公の永田と、その恋人・沙希との生活が軸になっています。

個人的に自分が今置かれている状況とすごく似ている部分があって、そこに感情移入しました。

「どんな言葉も僕は受け入れなければならない。すべての罵倒を受け入れたところで、報いには到底届かない。僕は何かを消すためではなく、背負うために沙希の言葉を聞きたいと思っていた。」

本書について既にたくさんの批評があると思いますが、好きなものは好きとできるだけ言いたいです。
というわけで僕にとっては大切な小説です。


コンサートのご案内を二件。

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「紀尾井の ようこそ、邦楽!2017 和楽器をやってみよう」

【日時】2017年7月16日(日) 12:30開場13:00開演(浴衣着付け希望者は12:00~12:45)
【場所】紀尾井小ホール(東京都千代田区紀尾井町6-5 google map
【対象】小中高生、大人 定員 120名
【参加費】小中高生 1000円 大人 2000円 親子セット券 2500円(第三部鑑賞のみ 自由席500円)
【内容】第一部 楽器紹介 第二部 ワークショップ和楽器体験 第三部 和楽器オーケストラあいおいによる演奏
【出演/ワークショップ】和楽器オーケストラあいおい
【問合せ】詳しくは紀尾井ホールのHPをご覧ください。URLはこちらです。先着順になります。

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「和楽器オーケストラあいおい 邦楽彩り 和楽器の調べ」

【日時】2017年7月30日(日)13:30開場14:00開演
【場所】姫路キャスパホール(兵庫県姫路市西駅前町88 google map
【料金】一般4000円 高校生以下2000円(全席指定)
【曲目】軍師官兵衛~和楽器オーケストラあいおいバージョン 荒れ鼠 SF交響ファンタジー《ゴジラ》 巷で話題の妖怪メドレー 合唱と和楽器オーケストラで綴る“日本の四季”
【出演】和楽器オーケストラあいおい
【友情出演】花柳源九郎 花柳美輝風(日本舞踊)
【特別出演】コール・ダ・ムール(合唱)
【問合せ】079-284-5806(姫路キャスパホール

ご来場お待ちしております。


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by mamesyakuhachi | 2017-05-15 00:01 | 又吉直樹 | Comments(0)

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「空港にて」村上龍(文春文庫)

いや~泣けましたよ。
役所で順番待ちをしながら読んでたんですけど、泣いてしまった。

まわりの人、どう思ったんだろう。まぁいちいち見てないか。

「この短編集には、それぞれの登場人物固有の希望を書き込みたかった。社会的な希望ではない。他人と共有することのできない個別の希望だ。」

あとがきのこの一文が示すように、この短編集で描かれるのは個別の希望で、それは他人から見たら取るに足りない希望であったり、理解されない目標だったりします。

表題作「空港にて」の主人公ユイはシングルマザーであり風俗嬢。ある日偶然みた映画から影響を受け、義肢装具士を目指すというのが粗筋。

「無理だと思う理由は、わたしが高卒で、すでに三十三歳になろうとしていて、離婚歴があって、しかも四歳の子どもがいて、風俗で働いている、そういうことだ。」

ユイは客観的に考えれば無理だという思いにしばられます。でも、それを支えてくれるのがサイトウという風俗で知り合った会社員。

「原因がわかってないと、ものごとは絶対に解決できないんだ。ユイさんは自分の何が問題なのかを知っている。だから解決策を発見したんだよ。」

ユイが見つけた「個別の希望」。
それを村上龍は手放しで絶賛するような書き方はしません。

著者は空港のある風景、たとえば一緒にいるのに不在感を感じさせる人間たちの様子を並行して描いていきます。

そのコントラストこそがこの短編集の最大の魅力だと思います。
希望はあくまでその人固有のもの。自分の考えでもって生きていくこと、そこには悲しさも当然あるだろうし辛いこともある。
何かを選べば何かを捨てるかもしれないけど、それでも希望を捨てずに生きていくことは悪いことじゃないと思います。

ところで、ジャンルは全く違うけど「個別の希望」という意味ですごく繋がりを感じる本をちょうど併読してたので紹介します。

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「年収90万円で東京ハッピーライフ」大原扁理(太田出版)

働くのは週2日。つまり週休5日。家賃2万8千円。東京多摩地区のアパートに住み、年収は90万円。
極貧の困窮生活……と思いきや、著者の生活は充実しまくり。

友達はたくさん持つべき。夢や目標がないとダメ。必死に働かないと将来困る。
そういう社会の常識やルールというものが正しいのかどうか自分で吟味し、他人と比べず、「自分が本当に幸せかどうか」のみで生きている著者。

他人の尺度ではなく自分の尺度で考える、という事を突き詰めて生きています。

なので、この本は「東京でも90万円で生活できるよ!」というマニュアル本でなくて、「自分の幸せを自分の尺度で追及したらこうなった」という本です。

だから面白いし、この本からも「個別の希望」を感じるんですよね。

どっちの本も自信をもってオススメできる本です。
是非読んでみてください。




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by mamesyakuhachi | 2017-03-06 00:01 | 村上龍 | Comments(0)

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「あやつられ文楽鑑賞」三浦しをん(ポプラ社)

やばい。
文楽面白い。

文楽って人形浄瑠璃とも言われる伝統芸能ですが、尺八奏者である身ながら今までよく知りませんでした。

三浦しをんのこの本はとにかく文楽への愛と熱がこめられた一冊。でも

「『伝統芸能なんだけど、すごくとっつきやすいの』なんてことは言わない。」

という言葉を敢えて冒頭にもってくる著者の作家魂。

尺八もそうですけど、伝統文化って分かりにくいし敷居も高い。

理解するためには鑑賞者の勉強や人生経験が必要な場合だってあると思います。

でも魅力を知ってしまたら、もう見ずにはいられない。

なぜなら、文楽に描かれるのは、どうしようもないダメ人間だったり、情に流されやすい人間だったり、とにかく人間くさいひと達ばかり。

まるで自分みたいですよ。

…というわけで。

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東京の国立劇場で現在開催中(といっても本日最終日)の文楽公演のチケットをいてもたってもいられずゲット。

今日の夜、最終日の最終公演「冥途の飛脚」を見に行きます。

それならば、

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「近松名作集」富岡多恵子(講談社)

図書館で借りて事前に読みました。はい、勉強です。

勉強は苦手…ところが読んでみたら、あら面白い。

「冥途の飛脚」の主人公・忠兵衛。これまた感情に流されやすい人間。
どうして友情や愛情が分からずに、見栄や感情で突っ走ってしまうんだー忠兵衛よ、と読みながらヤキモキ。

自分がダメ人間だからこそ、忠兵衛の突っ走り加減にも共感ができるというもの。

今日の公演が楽しみで仕方ありません。





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by mamesyakuhachi | 2017-02-20 00:01 | 三浦しをん | Comments(0)

時代の流れだ注釈も!



文学作品にはたまに注釈があります。
専門用語とか昔の言葉とかを解説してくれるので助かります。


そんな中「えっ!これに注釈いる?」というのがありました。
以前読んだ「卍(まんじ)」谷崎潤一郎(新潮文庫)です。


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この本の33ページ。
主人公の夫婦が自宅で夕飯を食べるシーン。

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「夫は晩御飯のときにそれ畳の上い広げて*」

とあります。(ちなみに「それ」は妻が書いた絵)

何に対する注釈なんだろう、と巻末を見ると

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「この頃は、畳の部屋で、低いちゃぶ台で食事をするのが普通だった。」

ええー!
まじで!
母の実家(福島)じゃまだ畳の上でご飯食べてるよ…。
さすがに、ちゃぶ台ではないけど…。

うーむ、現代っ子達は畳の上でご飯食べる習慣が既にないのだろうか…?


ちなみに、この新潮文庫版は改版で

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平成二十二年 五月十五日 百七刷改版

この時に加えられたのだろうか…。
うーむ。

皆さん、たまには畳&ちゃぶ台でご飯食べてみましょう!


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告知を一件。

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友達が出る演奏会でございます。次の火曜日です。

1/31(火)18:30開場、19:00開演 
カワイ表参道コンサートサロン・パウゼ(地図)にてクラシックコンサートがあります。
2500円です。

お時間ある方は是非。



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by mamesyakuhachi | 2017-01-30 00:01 | 谷崎潤一郎 | Comments(0)

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ある週末の夜。

時間が少し空いたので都内のカフェで読書タイム。

以前に図書館で見つけて気になっていた本…。

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本を開いたときの優しいぬくもり。

言葉がたちすっと心に入って来る。
そんな予感…。

「星と永遠にひとしく
 彼はいま高みに生きている、生が逃げ去る高みに」

19世紀を生きたニーチェ。
時を越えて心に届く言葉がきっとある。

見上げれば夜空には月。
素敵な充電タイムになりました。

----------

……いきなり何を書いてるかと言いますと。

知的そうな本を敢えて取り上げ、その本を読まずに記事を書く」というコンセプトで書いてみました。

私、遠藤頌豆36歳はニーチェをまともに読んだことはありません。

じゃあ、上の文章が嘘かというと嘘ではありません。

まず私は現実に土曜日の夜、時間が少し空いたので(別な言い方をすれば暇を持て余し)スタバに行き、「ニーチェ詩集」を持っていきました。

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そして「図書館で見つけて気になっていた本」と書いてますが、これも事実です。
以下のような経緯があります。

まず私は図書館で当初借りる目的だった「30代からのリアル薄毛&白髪を活かすヘアスタイル」を探し出し、カウンターに直行しようと思いました。

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しかし、その本だけをカウンターに持っていくのはどうしても恥ずかしいため、他の棚で何となく目についた(別な言い方をすれば隠れ蓑として役に立つかもと気になった)本、つまり「ニーチェ詩集」(彌生書房)もカウンターに持って行ったのです。

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そしてスタバで本を開きました。

開くだけなら一秒で出来ます。

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そして、本を適当にパラパラめくり、なんとなく深い意味がありそうな言葉を選び引用。

星と永遠にひとしく
 彼はいま高みに生きている、生が逃げ去る高みに

うーん、言葉がすっと入って来る…予感はする。あくまで予感ですが…。
そして時を超えて心に届く言葉が(人によっては)きっとある。

そしてニーチェが19世紀を生きていた情報はウィキペディアでゲット。やばい、便利、ネット。

さあ、これで本を読まずに何となく知的な雰囲気を醸し出しながら、夢に向かって(若干夢見がちに)生きていく風情の読書ブログが完成です。

大事なのは、とにかく「読んだ」とか「読了した」とか言い切らずに、曖昧な言葉を駆使して読む人の想像に任せることが大事。(……と思います。)

みなさんも臆せずに難しそうな本を紹介しまくりましょう!


ちなみに

「読まずに読書家ぶりたい」「本に興味ないが、人から読書家に見られたい」という方には以下の本を参考書としてお勧めします。

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「バーナード嬢曰く。」施川ユウキ(一迅社)

では、また来週月曜日に。

(なお、この記事は書物という敷居の高いものに親しんでもらいたい、という気持ちを目的に書いたものです。どの本にも固有の魅力や位置づけがあると思っていますので、難しそうな本であっても読みたい気持ちを大切にして、様々な本にふれて欲しいと思っています。)




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by mamesyakuhachi | 2017-01-09 00:01 | フリードリヒ・ニーチェ | Comments(0)



先週の記事では「はるか(『水に眠る』より)」北村薫(文春文庫)を6行(最初3行&終わり3行)だけ読んであらすじを予想してみました。


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読了したので、予想がどれくらい合っていたのか検証してみます。

ちなみに書き出しの3行は

 話を聞いて来たのは、父だった。夕食の膳の、鍋物をつつきながら、
 「モリタが店をしまうんだ」
 「ははあ」

そして終わりの3行は

 はるかの顔は、たんぽぽ色のろうそくの光に、うっすらと染まっている。その無邪気な口元が動き、
 「わたし、大みそかの夜から三日までは、お巫女さんのアルバイトするんです」

でした。
そして私遠藤が予想したあらすじは……


高校生のはるかはいつも笑顔をたやさない優しい女の子。
父の友人のモリタさんが店を閉めると聞いて心を痛めている。
それにモリタさんの家には少し年上のお姉さんがいて、今も仲良く過ごしている。
モリタさんやお姉さんの為に何かしてあげたい。
そうだ、巫女のアルバイトをする事をそれとなくお姉さんに話して一緒に神社で働こう。
はるかは優しく揺れるろうそくの光の中でそっと誓うのだった……。


さあ、どのくらい合っていたのか?

間違っていた部分に取り消し線を引くと……


高校生のはるかはいつも笑顔をたやさない優しい女の子。
父の友人のモリタさんが店を閉めると聞いて心を痛めている。
それにモリタさんの家には少し年上のお姉さんがいて、今も仲良く過ごしている。
モリタさんやお姉さんの為に何かしてあげたい。
そうだ、巫女のアルバイトをする事をそれとなくお姉さんに話して一緒に神社で働こう。
はるかは優しく揺れるろうそくの光の中でそっと誓うのだった……。


ああああ、間違いだらけ。
読んだ6行に書かれていない事で合っていたのは
主人公のはるかが高校生で笑顔たやさない女の子という部分だけでした。

うーん。難しい。

じゃあ、この小説のあらすじはどうだったかというと

書店を営む伊部英造は、パン屋だったモリタの跡地に新規店舗を構えることになった。
店舗の立ち上げに奔走し、従業員の確保に悩んでいた英造は、ある日工事中の新店の前に佇む高校生を見かける。
その高校生の名前は柳田はるか。聞けばこの新しいお店で働きたいという。
明るくひとなっつこい彼女は慣れないアルバイトに四苦八苦しながらも、周りの仲間に支えられながらお店で働くようになる。
やがてお店も軌道に乗り始め、初めてのクリスマスの時期を迎える。
はるかは英造に「クリスマスの飾りつけがしたい」と願い出る。
当初は嫌がっていた英造も、雰囲気が変わった店内の様子と、はるかの気持ちのこもった態度に心を動かされ始める。
そしてクリスマスイブの夜。閉店後の店内ではケーキを囲んでささやかなクリスマスパーティ。
はるかは優しく揺れるろうそくの中で皆と「聖しこの夜」を歌うのだった。

というような感じでした。(巫女の話は大筋とは関係なかったので後述します)


今回の【ほぼ未読書評】では知り合いの方々からも予想コメントを頂いたので、それに関係する部分をすこし書きます。


まずモリタについて。

最初3行に登場するモリタは人物名でもあり屋号でもあるようです。お店の正式名称はとくに言及されてなく、ご主人がなくなった為にお店を閉めるということでした。そして、モリタの存在はこの小説の冒頭にだけ書かれていただけで、その後は特に登場しませんでした。

次に巫女のアルバイトについて。

最後3行にある巫女のアルバイトの話は、年末年始に巫女をする予定のはるかが「聖しこの夜」を歌うのはまずいんじゃないかと本気で心配するというエピソードを表現したセリフです。
この部分は巫女として働くかどうかに力点はなく、はるかの純粋さを印象づけることに力点があるようです。

というような感じでした。
予想コメントを頂いた方々の中に「ろうそく」というキーワードで「クリスマス」を推理された方がいました。
正解でした。すごい。



三週にわたってお送りした【ほぼ未読書評】いかがでしたでしょうか?

意外に反響があったので、時期を空けてまた挑戦したいと思います。

改善点としては1ページでは少し長く、6行では短すぎるかもしれないということ。
そして選書がとても難しいということです。

でも、改善していけば教育の現場や読書会などでも活用できそうです。
今回は中身を推理するということに軸足を置きましたが、逆に書き出しと書き終わりだけを提示して中身を創作するというのも面白いかもしれません。

いろいろ考えればできそうなことは増えそうです。

-------

今週はこれにて以上です。
このブログは毎週月曜日に更新。
次回は12月12日です。
読んで頂きありがとうございました。


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by mamesyakuhachi | 2016-12-05 00:01 | 北村薫 | Comments(0)



先週の記事では、青山七恵「新しいビルディング(『お別れの音』より)」を2ページだけ読んであらすじを予想してみました。


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先日読了したので今週は予想がどれくらい合っていたのか確認してみます。

ちなみに私遠藤の予想したあらすじは


都会のオフィス街につとめる20代のマミコ。
無機質なコンクリート建築物に囲まれた生活を送っている。
マミコの最近の悩みは彼氏と親友A子の関係。
以前マミコは結婚を前提に付き合っている彼氏をA子に紹介した。
しかし、それからしばらく経って、偶然街で彼氏とA子が仲良く歩いているところに遭遇してしまう。
当然マミコとA子の関係は悪化し、そのうえ彼氏はマミコを捨てA子と結婚に踏み切ってしまう。
一人残されたマミコ。
勤務先の向かいにあるのは建設中のビル。巨大化するビルは不要になった鉄屑を置き去りにしながら建設されていく。
それはまるで取り残されたロッカーのハンガーのように決して祝福の対象にならない。
気づかないうちに修復できなくなった関係、そして行き場を失った感情。
それらは癒されることもなく、ただ中空を彷徨っている。


でした。

ではどのくらい合っていたのか?

間違っていた部分に取り消し線を引くと……


都会のオフィス街につとめる20代のマミコ。
無機質なコンクリート建築物に囲まれた生活を送っている。
マミコの最近の悩みは彼氏と親友A子の関係。
以前マミコは結婚を前提に付き合っている彼氏をA子に紹介した。
しかし、それからしばらく経って、偶然街で彼氏とA子が仲良く歩いているところに遭遇してしまう。
当然マミコとA子の関係は悪化し、そのうえ彼氏はマミコを捨てA子と結婚に踏み切ってしまう。
一人残されたマミコ。
勤務先の向かいにあるのは建設中のビル。巨大化するビルは不要になった鉄屑を置き去りにしながら建設されていく。
それはまるで取り残されたロッカーのハンガーのように決して祝福の対象にならない。
気づかないうちに修復できなくなった関係、そして行き場を失った感情。
それらは癒されることもなく、ただ中空を彷徨っている。


あああああ……間違いだらけ。

恋敵だと思っていたA子は単に仕事場の無口な先輩だったし。
三角関係のもつれなんて特にないし。
それと細かい部分では、主人公マミコが20代という予想も正解と言えなかったです。(マミコと若い女性社員がタメ口で話す場面があるので若いとは思うのですが、はっきり20代という表記は無い)

うーむ、難しい……


ちなみにこの作品のあらすじは、

入社して3ヶ月のマミコは2人だけの小さな部署で働いている。
先輩社員はフジクラという無口な女性。
無愛想な彼女との気づまりな雰囲気。
不仲ではないが友好的でもない、お互いの存在を必要最低限だけ意識している二人。
いつまでこの状態が続くのだろうとマミコは思っていたが、ある日フジクラから妊娠と退職を告げられる。
マミコはそれを不思議と何の感動もなく受け入れる。
そして退職の日、マミコは特に何の感慨もない。
外を見ると建設中のビル。その建物は不要になった鉄屑を吐き出しながら建設されていく。


という感じです。



予想は残念ながら殆ど当たらなかったものの、この【ほぼ未読書評】やっていて楽しい。

なので今週も別な本に挑戦したいと思います。

しかも!

先週は2ページ読みましたが、今回はハードルを上げて3行×3行の6行書評に挑戦です。


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「はるか(『水に眠る』より)」北村薫(文春文庫)全23ページ


著者のプロフィールを簡単に紹介します。
北村薫(きたむらかおる)は1949年生まれの小説家。大学在学中にミステリクラブに所属。1989年に「空飛ぶ馬」でデビュー。1991年に「夜の蝉」で第44回日本推理作家協会賞を受賞。直木賞最終候補作に過去6度選出。
(ちなみに男性作家です。)

今回はこの作品の書き出し3行と終わり3行の合計6行で作品のあらすじを予想してみます。
(なおネット環境の都合で3行表記にならない場合がありますが、下記引用部は本文のきっちり3行分です)


まず書き出しの3行


 話を聞いて来たのは、父だった。夕食の膳の、鍋物をつつきながら、
 「モリタが店をしまうんだ」
 「ははあ」


そして終わりの3行


 はるかの顔は、たんぽぽ色のろうそくの光に、うっすらと染まっている。その無邪気な口元が動き、
 「わたし、大みそかの夜から三日までは、お巫女さんのアルバイトするんです」


この引用部だけで得られる情報とそこから推理したものを箇条書きにしてみます。

(1)「話を聞いて来たのは、父だった」という文章から、この小説は「父」の子供の視点で描かれている。そして視点になっているがゆえにこの子供が主人公だと思われる。この人物は最後の3行に登場する「はるか」だと思われる。(タイトルが「はるか」だしね。)
(2)登場人物として上記引用部で判明するのは、はるか、はるかの父、モリタの三名。他は不明。
(3)はるかが巫女のアルバイトをするというので、年齢は15歳から22歳だと思われる。そして父の年齢は40歳から50歳くらいだろうか。モリタの年齢は予想が難しいが父がモリタを呼び捨てにしているので同い年か年下だと思われる。
(4)鍋物をしているのと大みそかのアルバイト話が出てるので、季節は冬。しかも12月。
(5)「モリタが店をしまう」と父が言った後に、はるかが「ははあ」と受けているので「やっぱりそうか」と思っていたと考えられる。という事は、モリタの店の状況を以前から知っていたのではないだろか。誰から聞いたのか?ここは新たな登場人物を設定。モリタ家の長女ではるかにはお姉さん的存在の女性から聞いたのだと勝手に予想。
(6)終わり3行で登場する「ろうそくの光」。解釈が難しいが、きっとこれは困窮したモリタ家は電気を節約し、ろうそくの光で凌いでいると思われる…。
(7)最後のはるかのセリフが敬語なので父に向けた言葉ではないと思われる。じゃ誰かというと多分モリタ娘だろう。

これらの情報をもとにあらすじを推理すると以下になりました。


高校生のはるかはいつも笑顔をたやさない優しい女の子。
父の友人のモリタさんが店を閉めると聞いて心を痛めている。
それにモリタさんの家には少し年上のお姉さんがいて、今も仲良く過ごしている。
モリタさんやお姉さんの為に何かしてあげたい。
そうだ、巫女のアルバイトをする事をそれとなくお姉さんに話して一緒に神社で働こう。
はるかは優しく揺れるろうそくの光の中でそっと誓うのだった……。



さあ、どうでしょう?
当たってるんでしょうか?

若干無理やりな感じも否めませんが……


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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は12月5日です。
読んで頂きありがとうございました。


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by mamesyakuhachi | 2016-11-28 00:01 | 青山七恵 | Comments(0)



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文庫本の裏表紙には、本の内容を紹介した文章が書いてあることが多いです。


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この部分です。

拡大すると


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負けん気が強く、いたずらが過ぎたために両親から可愛がられなかった“坊っちゃん”。学校を卒業し、唯一、面倒を見てくれた清(きよ)と離れ、一人で四国の中学校に赴任する。(後略)」

なんて書いてあります。

この文章だけで皆さん何の作品か分かるでしょうか?
おそらく本を読まない人でも分かる人は多いと思います。

そう、この本は夏目漱石「坊っちゃん」です。(角川文庫版)


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この紹介分には作品の内容や魅力が書いてあります。

そして逆にこの文章から何の作品か類推することも可能です。

今週は文庫本の紹介文を利用して文学クイズを皆さんに出題したいと思います。

題して 

【文学のタイトル当てクイズ】紹介文から推理して書名を推理してみよう!

です。


入門レベルから一流書評家レベルまでの全7段階。

いくつ分かるでしょうか?


1、【入門レベル】

後半が自殺以後に発表された、太宰文学の総決算ともいうべき作品。生きる能力を失い、なりゆきに任せ、廃人同様に生きる男の手記……それはこの世を去るに際してこれまで胸底にひた隠しに隠していた自分の正体を書き残した陰惨な自画像ともいうべきものである。(後略)」

これは多分、わかると思います。
「太宰」の「総決算」ともいうべき作品と言えば、あれですよね。

正解は→こちらです


2、【初級レベル】

昭和のはじめ、瀬戸内海べりの一寒村の小学校に赴任したばかりの大石先生と、個性豊かな12人の教え子たちによる、人情味あふれる物語。分教場でのふれあいを通じて絆を深めていった新米教師と子どもたちだったが、戦争の渦に巻き込まれながら、彼らの運命は大きく変えられてしまう……。(後略)」

これはどうでしょうか?
小豆島を舞台に映画化もされた名作です。

正解は→こちらです


3、【中級レベル】

キューバの老漁師サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。(中略)徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。

著者はノーベル文学賞作家。
近代アメリカ文学を代表する作品です。

正解は→こちらです

ここまでは普段本を読まない人でも分かる人はいると思います。
次のレベルからはやや難しくなっていきます。


4、【上級レベル】

海外留学から帰って大学の教師になった健三は、長い時間をかけて完成する目的で一大著作に取りかかっている。その彼の前に、十五、六年前に縁が切れたはずの養父島田が現われ、金をせびる。養父ばかりか、姉や兄、事業に失敗した妻のお住の父までが、健三にまつわりつき、金銭問題で悩ませる。(中略)近代知識人の苦悩を描く自伝的小説。

「健三」「島田」といった人物名で分かるでしょうか?
ヒントは海外留学(イギリス)から帰国した作家という事。
そして日本人なら誰もが知る文豪の作品です。

正解は→こちらです


5、【セミプロレベル】

貧窮のうちに無邪気に育ったお玉は、結婚に失敗して自殺をはかるが果さず、高利貸しの末造に望まれてその妾になる。女中と二人暮らしのお玉は大学生の岡田を知り、しだいに思慕の情をつのらせるが、偶然の重なりから二人は結ばれずに終る……(後略)」

いかがでしょうか?
ヒントは前掲の【上級レベル】の著者と双璧をなす文豪の作品です。

正解は→こちらです


6、【プロレベル】

ものおもへば沢の蛍もわが身よりあくがれいづる魂かとぞみる。愛する男を失った式部が、神の力によって悩める魂を鎮めるべく貴船神社に詣でた折の歌である。この日記は、多くの男性遍歴の中で、とりわけ深い愛情を捧げた帥の宮との恋愛生活を、宮との贈答歌を中心に叙述したもの。(後略)」

古典文学に詳しい方にとっては常識の範疇かもしれません。
ちなみに紫式部日記ではありません。

正解は→こちらです

次が最後のレベルです。
紹介文のみで分かる人はいるでしょうか?


7、【一流読書家レベル】

人生の途上で堪えがたい悲しみに直面したとき、人はその事実をいかに受けとめ、その後の人生をどう生き得るのか。知恵遅れの長男と事故による障害で車椅子に乗る次男―二人の息子を同時に自殺で失った女性が、その悲惨を真正面から引き受け、苦しみの果てにたどりついた生の地平とは?魂の癒しを探り、生きることへの励ましに満ちた感動的な長編小説。(後略)」

ノーヒントでいきます。

わかりますでしょうか?

正解は……

……

……

来週月曜(11月14日)の更新で発表します。

なので、来週も読んでくださいね。





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by mamesyakuhachi | 2016-11-07 00:01 | 複数著者など | Comments(0)



ボブディランがノーベル文学賞を取りましたね。

意外な受賞者に驚いた方も多いと思います。(僕もそうでした)

ところで海外の文学賞って、日本での知名度でいえばノーベル文学賞がダントツですよね。
でもノーベル文学賞以外の賞はあまり知られてないと思います。

世界の文学賞って何があるんだろう?
今週はそんな事を知るための本を紹介します。

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「世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今」都甲幸治、他(立東舎)

この本ではノーベル文学賞の他に

ブッカー賞(イギリス)
ゴンクール賞(フランス)
ピューリツァー賞(アメリカ)
カフカ賞(チェコ)
エルサレム賞(イスラエル)
芥川賞(日本)
直木賞(日本)

を取り上げています。
(芥川賞と直木賞が入ってるのは日本で最も有名な文学賞だから、という位置付けみたいです。)

ピューリツァー賞って報道写真の賞だと思ってましたが、文学や音楽にも与えられる賞だったんですね。
知らなかった。

ちなみに毎年村上春樹がノーベル文学賞候補になる一つ理由というのが上記カフカ賞と関係しています。

2004年のカフカ賞受賞者はオーストリアのエルフリーデ・イェリネク。イェリネクはその年にノーベル文学賞も受賞。
そして翌年の2005年、今度はイギリスのハロルド・ピンターがカフカ賞を受賞し、その年にノーベル文学賞を受賞。
二年連続のことだったので、カフカ賞はノーベル文学賞に近い存在と言われるようになったみたいです。
そして2006年の受賞者が村上春樹。村上春樹はその年にノーベル文学賞は受賞しなかったものの、カフカ賞受賞がきっかけになり毎年ノーベル文学賞候補なんて言われるようになったみたいです。


話が少しそれましたが、本書「世界の8大文学賞」について。
この本は文学賞を簡単に説明したあとに、受賞作を専門家が読書会形式で分析していきます。

この本の最大の魅力は、文学賞の位置付けや格付けを知ることよりも、なじみの薄い海外の現代文学に目を向けるきっかになる、という点だと思います。

たとえば本書の中で、僕が一番興味を持ったのがイギリスのブッカー賞。

ブッカー賞は選考方法が優れていて、例えば良い3点を列挙すると、

1、選考委員が毎年かわるため、癒着が起きにくい。
2、審査員が作家だけでなく、評論家、引退した政治家、さらに文学好きの芸能人と幅広い。
3、百冊以上の候補作を選考委員が全部読む。(通常の文学賞では、最終選考の数作品を読むだけ、というのが多い)
などなど。

賞の信頼度は高そうです。
本書で取り上げられているジョン・バンヴィル(アイルランド出身。2005年に『海に帰る日』でブッカー賞を受賞)の作品は読みたくなります。

書評家の江南亜美子は本書の中でバンヴィルについて、

バンヴィルは、記憶のなかの出来事を固着した情報として塊のまま描くのではなく、ある揺らぎとともに描き出すんです。思い出していく過程で、記憶がどんどん変わっていく、その生っぽさを捉えるのがうまい。

と評していて、バンヴィル作品に俄然興味が湧いてきます。

ちなみにこの本では「今後受賞して欲しい人」というミニコーナーもあって、

なんと、ノーベル文学賞の欄でボブディランを挙げている方がいました。

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挙げているのは中村和恵(詩人)です。
本書の発行は先月の9月23日。
すごい。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は10月31日です。

読んで頂きありがとうございました。







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by mamesyakuhachi | 2016-10-24 00:01 | 都甲幸治 | Comments(0)