タグ:人生を考える本 ( 22 ) タグの人気記事



最近読んで「こりゃ面白い!」と思った本を三冊。

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「寂しい生活」稲垣えみ子(東洋経済新報社)


「あれほど、『なければやっていけない』と信じていた家電が、『なくてもやっていける』どころか、『ないほうがむしろ楽』『面白い』『意外に豊か』という驚きの事実が次々と明らかになったからだ。」(P108)

次々に家電を捨て、気付いたら電気代が月150円台という生活になった著者。

「なければやっていけない」という考えが思い込みに過ぎなかったことに気づかされる一冊。

ちなみに上記引用文の「家電」の部分を他の言葉(たとえば、洋服、友達、仕事など)にかえて読んでみるのも面白いです。

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「すべての雑貨」三品輝起(夏葉社)


東京の西荻窪にある雑貨店の店主が書いた雑貨に関する本です。これが面白くて読み止まらない。

この本に書かれていることは、よくありがちな「好きな雑貨に囲まれた素敵な生活の提案」でもなければ、「雑貨の魅力を再発見」なんてものありません。

今まで雑貨で無かったものが、次々に「雑貨」の定義のなかに侵食され、気が付けば何が雑貨で何が雑貨であるかも甚だ不明になってしまった現代ついて書いた評論風なエッセイ……という感じです。

俺にとっては少し難しいけど、こんな切り口の雑貨に関する本を読んだことなかった。

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「<ふつう>から遠くはなれて」中島義道(青春出版社)


哲学者・中島義道の本です。
ふつうじゃない、むしろ偏屈な中島義道の語録集ですが、へこんでるときに読んだら元気になった本です。

「きみは理不尽に報われ、理不尽に救われる。きみは理不尽に成功し、理不尽に失敗する。きみは理不尽に幸福になり、理不尽に不幸になる。」(P198)

努力が必ず報われるわけでもなければ、正直に生きていても不幸になることはある。そして何もしてないのに幸せになったりする。というのは年を重ねるごとに実感しています。

そんな理不尽を存分に味わって生きていきたい人のための本です。

この本が気に入ったら中島義道の他の本(「孤独について」「カイン」など)も読んでみると面白いです。


以上三冊。


コンサート案内を1件。
今週土曜日。場所は小石川です。食事つき。

「koto concert 5th」

2017年7月8日(土) 15:00オープン 15:30スタート
《場所》イタリアンレストラン・青いナポリ/東京都文京区小石川3-32-1 2F(グーグルマップ
《料金》¥5000円(演奏後にイタリアンブッフェつき、ドリンク代別)
《出演》神崎歌子、田辺雅美和、中島裕康(以上、箏と三味線)、遠藤頌豆(尺八)
《曲目》海の見える街、夏色のアダージョ、四季の眺、桜ゆらら

食事とっても美味しいです。遠藤の大人気(?)MCも楽しめます。

聴いてみたい方は→ oxyges8nugue@yahoo.co.jp までご連絡下さい。





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by mamesyakuhachi | 2017-07-03 00:01 | 複数著者など | Comments(0)

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「空港にて」村上龍(文春文庫)

いや~泣けましたよ。
役所で順番待ちをしながら読んでたんですけど、泣いてしまった。

まわりの人、どう思ったんだろう。まぁいちいち見てないか。

「この短編集には、それぞれの登場人物固有の希望を書き込みたかった。社会的な希望ではない。他人と共有することのできない個別の希望だ。」

あとがきのこの一文が示すように、この短編集で描かれるのは個別の希望で、それは他人から見たら取るに足りない希望であったり、理解されない目標だったりします。

表題作「空港にて」の主人公ユイはシングルマザーであり風俗嬢。ある日偶然みた映画から影響を受け、義肢装具士を目指すというのが粗筋。

「無理だと思う理由は、わたしが高卒で、すでに三十三歳になろうとしていて、離婚歴があって、しかも四歳の子どもがいて、風俗で働いている、そういうことだ。」

ユイは客観的に考えれば無理だという思いにしばられます。でも、それを支えてくれるのがサイトウという風俗で知り合った会社員。

「原因がわかってないと、ものごとは絶対に解決できないんだ。ユイさんは自分の何が問題なのかを知っている。だから解決策を発見したんだよ。」

ユイが見つけた「個別の希望」。
それを村上龍は手放しで絶賛するような書き方はしません。

著者は空港のある風景、たとえば一緒にいるのに不在感を感じさせる人間たちの様子を並行して描いていきます。

そのコントラストこそがこの短編集の最大の魅力だと思います。
希望はあくまでその人固有のもの。自分の考えでもって生きていくこと、そこには悲しさも当然あるだろうし辛いこともある。
何かを選べば何かを捨てるかもしれないけど、それでも希望を捨てずに生きていくことは悪いことじゃないと思います。

ところで、ジャンルは全く違うけど「個別の希望」という意味ですごく繋がりを感じる本をちょうど併読してたので紹介します。

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「年収90万円で東京ハッピーライフ」大原扁理(太田出版)

働くのは週2日。つまり週休5日。家賃2万8千円。東京多摩地区のアパートに住み、年収は90万円。
極貧の困窮生活……と思いきや、著者の生活は充実しまくり。

友達はたくさん持つべき。夢や目標がないとダメ。必死に働かないと将来困る。
そういう社会の常識やルールというものが正しいのかどうか自分で吟味し、他人と比べず、「自分が本当に幸せかどうか」のみで生きている著者。

他人の尺度ではなく自分の尺度で考える、という事を突き詰めて生きています。

なので、この本は「東京でも90万円で生活できるよ!」というマニュアル本でなくて、「自分の幸せを自分の尺度で追及したらこうなった」という本です。

だから面白いし、この本からも「個別の希望」を感じるんですよね。

どっちの本も自信をもってオススメできる本です。
是非読んでみてください。




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by mamesyakuhachi | 2017-03-06 00:01 | 村上龍 | Comments(0)

自意識過剰読書

先日とある新刊書店にて。

文芸コーナーをうろうろ。
そして買った本がこちら。


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「十九才の地図」中上健次(河出文庫)
「『働きたくない』というあなたへ」山田ズーニー(河出文庫)
「夜を乗り越える」又吉直樹(小学館よしもと新書)

以上三冊。

しかしタイトルだけみると、なんだか少し病んでるな・・・俺。

いやでも、こういう人生考える系(中上健次の本は未読なので分かりませんが)の本はかなり好きで、以前からよく読んでます。

たとえば吉本隆明「ひきこもれ―ひとりの時間をもつということ 」(だいわ文庫)とか上原隆「友がみな我よりえらく見える日は」(幻冬舎アウトロー文庫)とか。

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たぶん自分と同じような悩みを抱えている人の本を読みたいんだろうなぁと思います。

しかし、僕の好きな本はだいたい暗い……。
僕の最も好きな小説のひとつ遠藤周作「沈黙」(新潮文庫)とかも、まぁ暗い。

でも、暗さが最高にいいんですけどね。

ああ、暗い本読みたい。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は7月11日です。
読んで頂きありがとうございました。
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by mamesyakuhachi | 2016-07-04 00:16 | 複数著者など | Comments(0)



先日6/17に開催しました練馬春日町図書館コンサート
今週このブログで紹介する本はそのコンサート内のブックトークで取り上げた本です。

音楽に出合い、そして音楽が傍らにある喜びを感じる良書です。


「学校では教えてくれない 人生を変える音楽」複数著者(河出書房新社)


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「自分の本物を見つけてくださいと伝えたい。ほかのだれもわかってくれなくても、みんながださいと言っても、恋人が認めてくれなくても、その本物を手放さないでください。その音楽は、書物より何よりも実際的に、あなたを助ける。困難なときに、救ってくれる。そうしてあなたの一部になる。強く、へこたれない、うつくしい一部になる。」(150Pより)


本書は中学生向けに書かれた書籍で、各界の著名人26人が好きな音楽や愛する名盤について文章を寄せた一冊になっています。
中学生向けとは言っても、大人も充分たのしめる内容です。
というよりむしろ、大人に読んで欲しい一冊です。

著者陣を少し紹介すると、又吉直樹さん(芸人)、柴田元幸さん(翻訳家)、辛酸なめ子さん(コラムニスト)、松井咲子さん(AKB48)、町田康さん(作家)、浦沢直樹さん(漫画家)などなどです。

この本の魅力は何といっても、文章に「熱量」があることです。
音楽の喜びや楽しさ、そして音楽が救ってくれたこと、そんな想いを感じることができる一冊になっています。

冒頭に引用した文章は作家・角田光代さんが寄せた文章。
ザ・ブルーハーツの「キスしてほしい」という曲を紹介された角田さん。
ブルーハーツの音楽を「世界とか、真実とか、いのちとか、そういったものと関係がある、と思った。」と述べた上で、冒頭の引用した文章に音楽へ想いを込めて綴っていきます。



その他の執筆者の文章にも音楽の感動が沢山つまっているので、一つだけ紹介します。

この4月に第13回本屋大賞を受賞された宮下奈都さんの文章。


「二十代の終わりに躓いた。いわゆる人生にだ。」


と綴る宮下さん。


「自分が悪くて、一歩も進めなくなった。味方はいなかった。(中略)誰のやさしさも届かなくなった。本も読めなくなり、あんなに好きだった音楽も聴けなくなった。」


失意の中、ある日宮下さんは都内のCDショップで偶然ある音楽を耳にします。
それはザ・マッド・カプセル・マーケッツというバンドの「GOVERNMENT WALL」という曲。

いわゆる「癒し系」でも「ヒーリングミュージック」でもない、ザ・マッド・カプセル・マーケッツの音楽。

宮下さんは出合いの瞬間と、音楽にふれていく中での心境の変化を次のように綴っています。


「何も期待せずに店に入ったのに、すぐに足が止まった。(中略)それは、激しくて、美しい、何かだった。」

「それからは、そのCDばかりを聴いて過ごした。マッド・カプセル・マーケッツとは、日本のロックバンドで、かなりハードだ。それまでの私だったら聴かなかっただろう。でも、沁みた。マッド・カプセル・マーケッツを聴いている間だけ、息をつくことができた。心が安らかでいられた。(中略)激しいロックが、つんざくような音が、心の深いところにやさしく届いた。」


僕はここの部分を読むたびに「激しいロック」が「やさしく届」くというのが、どんなものなんだろう、と想像してしまいます。
きっとそれは表面的な癒しとかじゃなく、もっと根源的な何かなんだろうと感じます。

音楽が、他人のいう評価やジャンル分けとは別に、自分にとってどう響くという根源的な何かに繋がっている……そんな豊かな予感に満ちています。

中学生に向けて書かれた本書「学校では教えてくれない 人生を変える音楽」。
音楽との新たな出合いを約束してくれる一冊です。

ご興味ある方は是非ご一読下さい。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は7月4日です。
読んで頂きありがとうございました。



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by mamesyakuhachi | 2016-06-27 00:01 | 複数著者など | Comments(0)

本と尺八



先週発行のご案内をしたフリーペーパー「本と尺八」


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「中身はどうなってるんですか?」というお問い合わせを何度か頂いたので少し紹介します。

サブタイトルは「悲しみの中で救ってくれたのは本でした」です。
(ちなみにサイズはA5版で全10ページです。)


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僕は29歳のときに尺八を一度やめてまして、その時に読書を始めました。
そんなことを前書きとして書いてあるページがあり、


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そして、次のページからは自分が出会った本と、その本で出会った言葉を載せています。


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取り上げている本は七冊。
どの本も生きる力を与えてくれた本です。

そして、最後のページには遠藤頌豆のCDつき。

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尺八とピアノによるオリジナル曲を2曲と朗読を1編、録音してます。
サポートピアニストは木下愛子さんです。


あと、先週ご案内しましたがフリーペーパー「本と尺八」送料無料キャンペーンも継続中です。

連絡先は prism.sya@gmail.com です。

もしくはfacebookのメッセージでも構いませんので、ご連絡頂ければ郵送いたします。
(お名前、ご住所、必要部数をお知らせ下さい)

あと、先週は都内の書店等を回り、フリーペーパー「本と尺八」を少しずつ置いてまわりました。
なので、残っていれば下記のお店にあります。

【東小金井】
only free paper
東京都小金井市梶野町5-10-58 コミュニティステーション東小金井内

【吉祥寺】
BOOKSルーエ
東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目14−3
茶房 武蔵野文庫
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-13-4

【西荻窪】
今野書店
東京都杉並区西荻北3-1-8
旅の本屋のまど
東京都杉並区 西荻北3-12-10司ビル1F
古書 音羽館
東京都杉並区西荻北3-13-7

【下北沢】
本屋B&B
東京都世田谷区北沢2-12-4
クラリスブックス
東京都世田谷区北沢3-26-2-2F

【赤坂】
双子のライオン堂
東京都港区赤坂6-5-21-101

【中井】
伊野尾書店
東京都新宿区上落合2-20-6

【谷根千】
古書ほうろう
東京都文京区千駄木3-25-5
タナカホンヤ
東京都台東区池之端2-7-7

以上のお店に置いてきました。

フリーペーパー「本と尺八」をどうぞよろしくお願いします。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は5月16日です。
読んで頂きありがとうございました。


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by mamesyakuhachi | 2016-05-09 00:01 | 尺八と生活 | Comments(0)


お知らせから。

僕の知り合いの図書館司書の方が携わっている図書館イベントを2件。
今月開催予定の知的書評合戦ビブリオバトルのご案内です。


『知的書評合戦ビブリオバトルin塩山 8』
【日時】2016年2月20日(土) 17時30分~
【場所】甲州市立塩山図書館(山梨県甲州市塩山上塩後240地図
【問合せ】0553-32-1505(甲州市立塩山図書館
※発表者は既に決定済とのことですが、観覧者は当日自由に参加して良いとの事です。


『知的書評合戦ビブリオバトル 立川市柴崎図書館決戦!』
【日時】2016年2月28日(日)14:00~16:00(開場13:45~)
【場所】柴崎学習館 第一視聴覚室(柴崎図書館横、東京都立川市柴崎町2-20-5地図
【問合せ】042-525-6177(立川市立柴崎図書館
※発表者5名(大学生以上)と観覧者20名によるビブリオバトルです。数日前の時点ではまだ発表者を募集中でしたので、ご興味ある方は是非ご参加下さい。

以上2件お知らせでした。
ちなみに2月20日の塩山図書館では発表者として参加します。

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『自分をいかして生きる』西村佳哲/著(ちくま文庫)


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タイトルだけを見ると安直な自己啓発書のように感じるかもしれません。
しかしながら、この本は生き方のノウハウやテクニックを紹介した本ではありません。

著者の肩書は「働き方研究家」。
この本の書き出しに、本書の立ち位置が端的に示されています。


『〈仕事〉は〈人生〉と、〈働き方〉は〈生き方〉と背中合わせで、ほかの誰も肩代わりすることができない一人ひとりの生に直結している。
つまりそれは極めて個別的なものだ。普遍的な言葉で語りきれるものじゃない。
こうすればいいとか、こんな風に働くべきだとか、生きるべきといった話を他人が示すことはできない。』


著書が本書で伝えたいことは生きる事への普遍的なテクニックではありません。
個々人それぞれの独自性やあり方、それらを大切にした上で、どのように仕事をし生きていくかという事を考えていく内容になっています。

そもそも「いい仕事」とは何でしょうか?
心をこめて商品を開発すること、贅をつくした建築物をつくること、素晴らしい音楽を奏でること。
様々な仕事があると思います。

著者は仕事の見えている部分だけではなく、仕事の奥にある根源的な人間の在り方について考えを巡らせていきます。
仕事の先には必ず人が〈いる〉という認識、人が〈いる〉ことで仕事がより他者に届くのはなぜなのか、という事に眼差しを向けていきます。


『社会は、わたしたち一人ひとりの仕事の累積でできている。/それら一つひとつの仕事を通して、わたしたちは日々、無数の存在感ないし不在感と接している。「いる」とか「いない」とか。/
美味しそうなのに、食べても満たされないもの。立派に見えるのに、どこかごまかされている感じがするもの。/「こんなもんでいいでしょ」という感覚の中で行われた仕事は、同じ感覚を人にうつす。ある人間の〈あり方〉が、仕事を通じて他の人にも伝播してゆく。』


本書の中で著者は様々な人物のもとを訪れ、仕事や生き方について取材を行っていきます。
家族の繋がりを大切にしながら営む都内の蕎麦店、地域の人から愛されるカフェを奈良で経営するオーナー、アメリカのロサンゼルスで小さな宿を切り盛りする女性経営者。

取材の中で著者が感じたのは、それぞれの仕事にはそれぞれのアプローチが存在するという事。
他者に自分なりの誠実さと優しさを差し出し、自己と他者を大切に扱いながら仕事をし、いつしか「自分の仕事」に辿りついた人達の姿。

生きる事はたやすいことではないし、上手くいくことばかりでもありません。
それでも、自分のやり方で自分の仕事を作っていく事はどんな状況であっても可能なんじゃないかと、著者は言います。

本書の終盤で著者が発したシンプルな問いが印象的です。

『みなさんはどんなふうに働いて、生きてゆくんですか?』

この問いに皆さんはどう答えるでしょうか。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は2月8日です。
読んで頂きありがとうございました。


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by mamesyakuhachi | 2016-02-01 11:45 | 西村佳哲 | Comments(0)

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今週もピアノ弾いてます。

気に入ったフレーズを書き留めながら。
CD完成までコツコツ地道な作業です。

ところで先日は師匠である田辺頌山先生のレッスンを受けてきました。
数ヶ月前から練習しても出来ない事を相談した上でのレッスン。
自分で悩んだ期間がある分、先生の言葉と演奏に納得できる事が沢山ありました。
やはりレッスンには準備が必要です。
そして復習を頑張らねば。

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棚橋弘至「棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか」(飛鳥新社)

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前向きな人は苦手なんです。
でも、前向きさの中にその人の葛藤や他人への気遣いを見ると好感を抱きます。

プロレスについて、みなさんはどんな印象を持っていますか。

僕は「汗くさい」「格闘技の名を借りたお芝居」「一昔前のもの」というイメージでした。

本書の著者は新日本プロレス所属のプロレスラー棚橋弘至選手です。
棚橋選手は低迷するプロレス人気の復活と過去の栄光からの脱却に挑戦していきます。

新日本プロレスには黄金時代がありました。
アントニオ猪木に代表されるスター選手の存在、ゴールデンタイムのテレビ放送。
安定した人気と放映収入で試合会場は満員の観客でひしめいていました。

しかしながら、1990年代後半からK-1に代表される総合格闘技の台頭で人気に陰りが見えていきます。

それに伴うテレビ放送の打ち切り、追い打ちをかけるような人気レスラーの引退。
「昔は良かった」「プロレスは終わった」という声が内外から聞こえてくるようになります。

著者が過ごした20代、それはプロレスの低迷期でした。
ガラガラの試合会場、ブーイングの嵐、経営母体の新日本プロレスは旧態依然とした態度。

そんな環境の中でも著者は「会社が駄目だから」「不景気だから」と他人のせいにせず「何か俺にできる事はないのか」「きっと良くなる日が来る」と信じ続けます。

ウェイトトレーニングの改善と筋肉の作り方や魅せ方の研究、美しくも迫力のある技の練習、闘う意味を考えた対戦カードの組み方、そしてファンサービスを怠らず地方営業でも全力をつくす事。

地道で時間がかかる作業。すぐには結果には結び付きません。
著者は弱さに流れそうになりながらも踏み止まり、逆境の中で信念を通します。

やがてブーイングばかりだった会場からは少しずつ棚橋コールが聞こえてくるようになっていきます。

そしてデビューから10年以上たち、遂に辿り着いた満員の東京ドームのリング。
観客と笑顔と歓声、そして心からの棚橋コール。
その中でリングに立った著者の喜びは察して余りあります。


本書の中で著者は「プロレスは負けて輝く事がある」と言います。
そして「いかなる困難に直面しても、鍛えて立ち向かって、受けて、受けて、最後に逆転する。」とも。

努力をしても結果がついてこない事は有ると思います。
でも僕は、人生で最も大切な事は諦めずに努力を続ける事だと思っています。

結果にめげず勝利を信じ、逆境を乗り越えて努力し続ける事。
それは人生の中で最も大切な資質だと思います。

プロレスラーが負けても輝いているのは困難の中でも前を向いているからです。

努力と勝利への執念に裏打ちされている著者の言葉たち。

太陽のような眩しさを感じる一冊でした。


今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は4月13日です。
読んで頂きありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2015-04-06 00:57 | 棚橋弘至 | Comments(0)

かんでもかんでも収まらない。

花粉症。

外出中はポケットティッシュが手放せません。
先日はポケットティッシュ6個と箱ティッシュ半分を1日で消費。
でも本番中にクシャミをした事はありません。
不思議です。

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最近読んだものを何冊か。

若林正恭『社会人大学 人見知り学部 卒業見込』(ダ・ヴィンチ・ブックス)

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先週読了。
お笑い芸人オードリー若林正恭のエッセイです。
タレント本はあまり読んだ事がないのですが、この本は素直に面白いです。
自分が体験し納得した事しか文章にできない、という著者の真面目な姿勢を感じました。

著者は不器用で少し自意識過剰。
誠実さを保ちたいが故に、周りの目ばかりを気にしすぎて自爆。
そして本人のブログ「どろだんご日記」は仲間内から「暗い!」と酷評。
(ちなみに「暗い!」と言われた当時のブログ記事は現在非公開。残念。)
なんか著者は誰かに似てるんだよなぁ・・・・・・・・あ・・・俺だ。



シェル・シルヴァスタイン/著、村上春樹/訳『おおきな木』(あすなろ書房)

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不思議な絵本です。読むたびに印象が変わります。
時には愛の残酷さを感じ、時には悲しみの中に希望を感じ、時には一つだけの解釈は何においても存在しないことを教えてくれます。

訳者あとがきにもあるように自由な読み方が出来る絵本です。
手元に置いて、事あるごとに読み返したい一冊です。



平野啓一郎『私とは何か 「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書)

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小説家平野啓一郎による評論。
人は他人との関係性の中でいろいろな顔を持っています。
仲の良い友達の前では明るい自分、苦手な人の前では無口な自分、大切な人の前では優しい自分、嫌いな人の前では冷たい自分などなど。
それら様々な人格を持つ自分。それを「裏表がある」とか「いい顔しい」とかと否定することなく、自分のもつ「分人」として肯定的に考えていきます。

人間関係につまづいた時に勇気をくれる一冊です。

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今週はこれにて以上です。
毎週月曜日に更新。
次回は3月23日です。
読んで頂いてありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2015-03-16 10:35 | 複数著者など | Comments(0)

先週月曜日は中野区立江古田図書館にて知的書評合戦ビブリオバトルに参戦しました。

テーマは「50年後に残したい一冊」

発表者は5名で結果は1位になれませんでした。(2位以下の順位は敢えて聞かなかったので不明です)

紹介本は又吉直樹「第2図書係補佐」(幻冬舎よしもと文庫)
・・・ですが、実はギリギリまで古井由吉「杳子」(新潮文庫)を紹介しようと思っていました。

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「杳子」は硬質な悲しみをたたえた小説。読むと陰湿な影に入りこんでしまいます。
僕はこの作品の悲しさの中に、どうしても入り込めない他人というものや、世の常識からズレてしまう時の生きづらさを感じます。
美しさと影を感じる著者の文章、そして作品に常に流れる緊張感と固有名詞を避けた展開。
それをどう解釈すれば良いか、分からないながらも探り当てたいと思いながら読みました。(自分の解釈が50年後にはどう変わるだろう、という気持ちも込めたかったんですね)
しかしながら、今の僕では
「杳子」を捉えきれず直接紹介するのは結局憚られました。そこで「杳子」を紹介していた「第2図書係補佐」を取り上げました。(直接紹介するのは無理でも間接的に50年後に残す事はできるだろうと考えたんです。)

「第2図書係補佐」で又吉さんは自分の元恋人との思い出に密やかな悲しみを織り込んで「杳子」を紹介していました。「杳子」の魅力が伝わる文章に託したという感じです。

そんな経緯があったものの、5分のプレゼンでは自分の辿った道筋や二つの本の魅力を上手く伝えられませんでした。時間の使い方に自己反省です。

やや後悔が残る今回のビブリオバトルでしたが、他の発表の中で一冊の本との出会いがありました。
今日はその本を取り上げます。

パウロ・コエーリョ「アルケミスト」平尾香/画、山川紘矢・山川亜希子/訳(角川文庫)

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【あらすじ】
羊飼いの少年サンチャゴは旅の途中で「セイラムの王様」と名乗る老人に出会う。王様は運命を生きよと少年に語りかける。やがて少年は全てを捨てて自己の運命、そして内なる心の声と共にエジプトに旅立つ。


僕はビブリオバトル後に一旦図書館を出たものの、何だか心に引っかかりを感じ、この本を借りる為に踵を返しました。
自宅に帰り読み始め、すぐに話に引き込まれました。
この物語は夢を追い続けること、そして運命を信じることについて書かれた本です。

気になった文章を引用します。

『僕は本当は十年も前に始められたことを、今やり始めたのだ。二十年間も待たなかっただけ、少なくとも僕は幸せだよ』
『「マクトゥーブ」と商人が最後に言った。「それはどういう意味ですか?」(中略)「それは書かれている」という意味さ』
『おまえが自分の内にすばらしい宝物を持っていて、そのことを他の人に話したとしても、めったに信じてもらえないものなのだよ』
『傷つくのを恐れることは、実際に傷つくよりもつらいものだと、おまえの心に言ってやるがよい。』
『彼のやり方は僕とは同じではなく、僕のやり方は、彼のやり方と同じではない。でも僕たちは二人とも、自分の運命を探求しているのだ。だからそのことで僕は彼を尊敬している』

夢を見ること、信じることの素晴らしさを描いた作品。世界中で愛読されています。

そして、この作品を今回のビブリオバトルで紹介されていたのは40代男性、図書館司書の方でした。
その方が伝えたのは、この本にまつわる奇跡でした。
男性のご友人のもとに実際に起きた奇跡。創作である「アルケミスト」が実話になり得た事を語られていました。
どういう奇跡か、ここで詳細を伝えたい所なんですが、紹介されていた方の大切な思い出なので、詳しくは伏せたいと思います。

ごく簡単に言えば、「アルケミスト」との出会いから、数年後に夢を叶えたご友人のお話でした。

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夢を叶えるのって本当に難しいですよね…。
夢を追いかけるという事が大人になればなるほど如何に難しいかは想像できると思います。

僕は「夢を追うことは素晴らしい」とは思いこそすれ、それを自分に素直に当てはめたり他人に吹聴したりは出来ません。
常に現実に引き戻されるし、「いい年して・・・」とか「現実みなよ」とも言われるし、たとえ言われなくても周囲からそう思われているんじゃないかと考えるとやはり怖いです。

この「アルケミスト」はそういった人間の複雑さや脆さを知りながらも、物語としてシンプルな1つの道筋を照らす作品だと思います。

紹介された男性が一番好きな文章として以下の文章を引用されていました。

『おまえが何かを望む時には、宇宙全体が協力して、それを実現するために助けてくれるのだよ』

司書の男性も、夢を叶えたご友人もきっとその言葉に支えられてきたのだと思います。

夢を追いかけて情熱を燃やし続ける事は本当に難しい事です。
あと1日頑張れば、あと1歩踏み出せば頂上に着くかもしれない。でも闇の中は非常に恐いものです。

それを分かった上で、そして年齢と比例して否応なく増していく複雑さを払いのけて、敢えてシンプルに伝える言葉には感動的な響きがありました。

一冊との出会いに感謝です。

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本には個人的な思い出が閉じ込められています。
それが限定的であっても、いや限定的であるからこそ、感情や温度や熱の強さがあります。

それに触れたとき「繋がった」と感じます。
僕もそんなささやかな繋がりを音楽や本を通して伝えたいです。

僕のこれからの人生も、もしかすると『マクトゥーブ』なのかもしれません。

どんな物語なのか続きを気長に楽しみたいと思っています。

今日は長くなりましたが、これにて以上です。

更新は毎週月曜日。
次回は10月17日です。
読んで頂きありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2014-11-10 01:00 | パウロ・コエーリョ | Comments(3)

上原隆さんというノンフィクション作家を皆さんご存知でしょうか。

『困難に遭遇したときに、人はどうやって自分を支えるのだろう』という問題意識をテーマに市井の人々に焦点をあてたノンフィクション作品を執筆されています。

僕は上原さんの作品『雨にぬれても』『友がみな我よりえらく見える日は』(ともに幻冬舎アウトロー文庫)『こんな日もあるさ』(文藝春秋)を過去に読みました。

上原さんのプロフィールを紹介します。
(2009年、朝日文庫刊行の『にじんだ星をかぞえて』より)

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1949年神奈川県生まれ。コラムニスト。
立命館大学卒。市井の人々の日常を取材し、ぐっとくるエピソードをつづったノンフィクション・コラム『友がみな我よりえらく見える日は』(幻冬舎アウトロー文庫)がベストセラーとなる。著書に『喜びは悲しみのあとに』『雨にぬれても』(ともに幻冬舎アウトロー文庫)、『胸の中にて鳴る音あり』(文藝春秋)など。
お話をきかせてくださる方は、uehara@t.email.ne.jpまでご連絡を下さい。
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僕は是非お会いしたいと思い、先月メールを送りました。
その後、上原さんからお返事があり、嬉しい事に先週お会いする事ができました。


待合せ場所は銀座、ホテルのラウンジ。時間は午後2時。
上原さんの第一印象は温和で穏やかでした。

二時間ばかりお話ししました。
尺八の事、音楽の事、本の事、そして生きる喜びや悲しみなどについて。

上原さんは優しげに相槌をうち僕の話を熱心に聞いて下さいました。
「自分はこう考えて生きてきた」「こんな風に生きていきたい」という取り留めない僕の話を、ありのままに聞いて下さいました。
上原さんは僕の話に対して、敢えてご自身の考えを提示されませんでした。

その姿勢は今まで上原さんの作品で僕が抱いていた印象「人生の喜びや悲しみをありのままに捉える。人生に明確な答えは存在しないかもしれない。しかし、だからこそ価値がある。」そのものでした。

お話する中で自分でも意外だったのが、普段は明るくない僕が前向きな事を沢山話せた事です。

ラウンジを出て、帰宅途中の電車の中で上原さんの本を読みました。
小さな光がきらきらしていました。

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今日は中野区立江古田図書館で第2回ビブリオバトルに参加します。
テーマは『50年後に残したい一冊』です。
次の更新で結果や紹介した本を報告したいと思っています。

今週はこれにて以上です。

このブログは毎週月曜日に更新。
次回は11月10日です。

読んで頂きありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2014-11-03 08:39 | 上原隆 | Comments(0)