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「あやつられ文楽鑑賞」三浦しをん(ポプラ社)

やばい。
文楽面白い。

文楽って人形浄瑠璃とも言われる伝統芸能ですが、尺八奏者である身ながら今までよく知りませんでした。

三浦しをんのこの本はとにかく文楽への愛と熱がこめられた一冊。でも

「『伝統芸能なんだけど、すごくとっつきやすいの』なんてことは言わない。」

という言葉を敢えて冒頭にもってくる著者の作家魂。

尺八もそうですけど、伝統文化って分かりにくいし敷居も高い。

理解するためには鑑賞者の勉強や人生経験が必要な場合だってあると思います。

でも魅力を知ってしまたら、もう見ずにはいられない。

なぜなら、文楽に描かれるのは、どうしようもないダメ人間だったり、情に流されやすい人間だったり、とにかく人間くさいひと達ばかり。

まるで自分みたいですよ。

…というわけで。

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東京の国立劇場で現在開催中(といっても本日最終日)の文楽公演のチケットをいてもたってもいられずゲット。

今日の夜、最終日の最終公演「冥途の飛脚」を見に行きます。

それならば、

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「近松名作集」富岡多恵子(講談社)

図書館で借りて事前に読みました。はい、勉強です。

勉強は苦手…ところが読んでみたら、あら面白い。

「冥途の飛脚」の主人公・忠兵衛。これまた感情に流されやすい人間。
どうして友情や愛情が分からずに、見栄や感情で突っ走ってしまうんだー忠兵衛よ、と読みながらヤキモキ。

自分がダメ人間だからこそ、忠兵衛の突っ走り加減にも共感ができるというもの。

今日の公演が楽しみで仕方ありません。





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by mamesyakuhachi | 2017-02-20 00:01 | 三浦しをん | Comments(0)



女性から男性に「その洋服、良いですね」と言うよりも「その洋服、わたし好きです」と言う方が喜ばれる。

らしい。

たしかに前者には使い古されたお世辞っぽさを感じるが、後者には具体性があり、さらに「わたし好きです」という男性が喜びそうなフレーズも入っている。

このフレーズを知ったのは漫画家でエッセイストの益田ミリの書籍。
何の作品だったか今や思い出せないのですが、益田ミリの作品には常に共感させる力があり、どの作品も面白い。


今週はそんな益田ミリの女性向けエッセイを取り上げ、人生の機微を学び、さらに男子力なるものを上げてみようと思います。

参考テキストはこちら

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「キュンとしちゃだめですか?」益田ミリ/著(文藝春秋)です。

この本では大人の女性が世の男性たちのどんな言動や仕草にキュンとするかを綴ったエッセイになっています。

本書で取り上げられているキュンとするポイントは全90項目。

その中から一般男性が実生活でも応用できそうな7項目を選び、初級~プロ級までの四段階に分けて紹介してみます。


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【初級:大多数の男性が今日からできるキュン】

「ドアを押さえててくれてキュン」(46頁)

これは分かる。解説不要でしょう。
日常でもチャンスは多いです。

「ありがとうにキュン」(14頁)

例えばエレベーターを降りるとき、開ボタンを押してくれている女性に、さりげなく「ありがとう」と言えること。いやこれは男女関わらず嬉しい。


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【中級:気遣いと記憶力も必要なキュン】

「覚えててキュン」(78頁)

過去にあったやり取りや会話で嬉しかったことを思い出し、改めて謝意を伝える事。
確かに嬉しい。でも誰にいつ言われたかきちんと覚えていないと墓穴を掘りかねないですね。

「年齢を忘れてくれてキュン」(88頁)

年下の男性から「若く見えますね」と言われるより「ぼくと同じ歳くらいじゃなかったでしたっけ?」と言われる方が嬉しい、との事。
「若く見えますね」はお世辞っぽいですが、「ぼくと同じ歳~」の方が確かにリアリティーを感じます。


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【上級:空気が読めてセンスが必要なキュン】

「『ぜ』にキュン」(80頁)

本書によると「行こう」と言われるより「行こうぜ」と言われる方が嬉しいらしい。
意図することは分かるものの、如何せん人を選ぶでしょうね。
ちなみに私は20代前半の頃、後輩の女の子に言って引かれた経験があります。

「『おいで』にキュン」(154頁)

著者いわく「若い女の子として見てくれているような感じ」がするとの事。
優しさを込めて言われたら確かに嬉しいでしょうね。
しかし使うのは勇気がいるし、これも人を選ぶ。そしてそもそも恥ずかしくて言えない。


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【プロ級:もはや意味不明で高レベルなキュン】

「ちくわ天にキュン」(100頁)

著者が仕事の打ち合わせの後に、仕事相手の男性とセルフうどんを食べに行く流れに。
その男性が「ぼくはトッピング、毎回、決まっているんです」と言って選んだのは「ちくわの天ぷら」。
著者はその時すかさず「かわいいっ」と思ったとの事。
意外性か、「ちくわの天ぷら」の語感なのか……。うーむ、まずそのシチュエーションがないな。


以上四つのレベルに分けて紹介してみました。

世の男性のみなさん、使えそうなものから実践してみましょう~。


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ここからは一つ耳より情報です。

新宿区中井にある伊野尾書店さんで「中井文庫」という文庫フェアを9月1日より開催中です。

このフェアは伊野尾書店さんと交流のある方々が、それぞれのオススメの文庫本を選書したブックフェアになっています。

今回は私もご縁があり、選書に参加しています。

(店長さんのブログに詳細が載っています→伊野尾書店WEBかわら版

地元店主、大学教授、システムエンジニア、放送作家、写真家、プロレスラー、バーテン、書店スタッフなどなど、様々な方々が選者として参加されている「中井文庫」。

10/31までの開催です。
お近くにお立ち寄りの際は是非足を運んでみて下さい。

【伊野尾書店・中井文庫2016】

《住所》東京都新宿区上落合2-20-6 グーグルマップ
《最寄駅》地下鉄大江戸線・中井駅A2出口を出て徒歩0分 西武新宿線・中井駅から徒歩1分
《営業時間》10:00-22:00(平日) 11:00-21:00(土曜) 11:00-20:00(日祝)
《定休日》年中無休(年末年始・棚卸日を除く)

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は9月12日です。

読んで頂きありがとうございました。







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by mamesyakuhachi | 2016-09-05 00:01 | 益田ミリ | Comments(0)



先日6/17に開催しました練馬春日町図書館コンサート
今週このブログで紹介する本はそのコンサート内のブックトークで取り上げた本です。

音楽に出合い、そして音楽が傍らにある喜びを感じる良書です。


「学校では教えてくれない 人生を変える音楽」複数著者(河出書房新社)


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「自分の本物を見つけてくださいと伝えたい。ほかのだれもわかってくれなくても、みんながださいと言っても、恋人が認めてくれなくても、その本物を手放さないでください。その音楽は、書物より何よりも実際的に、あなたを助ける。困難なときに、救ってくれる。そうしてあなたの一部になる。強く、へこたれない、うつくしい一部になる。」(150Pより)


本書は中学生向けに書かれた書籍で、各界の著名人26人が好きな音楽や愛する名盤について文章を寄せた一冊になっています。
中学生向けとは言っても、大人も充分たのしめる内容です。
というよりむしろ、大人に読んで欲しい一冊です。

著者陣を少し紹介すると、又吉直樹さん(芸人)、柴田元幸さん(翻訳家)、辛酸なめ子さん(コラムニスト)、松井咲子さん(AKB48)、町田康さん(作家)、浦沢直樹さん(漫画家)などなどです。

この本の魅力は何といっても、文章に「熱量」があることです。
音楽の喜びや楽しさ、そして音楽が救ってくれたこと、そんな想いを感じることができる一冊になっています。

冒頭に引用した文章は作家・角田光代さんが寄せた文章。
ザ・ブルーハーツの「キスしてほしい」という曲を紹介された角田さん。
ブルーハーツの音楽を「世界とか、真実とか、いのちとか、そういったものと関係がある、と思った。」と述べた上で、冒頭の引用した文章に音楽へ想いを込めて綴っていきます。



その他の執筆者の文章にも音楽の感動が沢山つまっているので、一つだけ紹介します。

この4月に第13回本屋大賞を受賞された宮下奈都さんの文章。


「二十代の終わりに躓いた。いわゆる人生にだ。」


と綴る宮下さん。


「自分が悪くて、一歩も進めなくなった。味方はいなかった。(中略)誰のやさしさも届かなくなった。本も読めなくなり、あんなに好きだった音楽も聴けなくなった。」


失意の中、ある日宮下さんは都内のCDショップで偶然ある音楽を耳にします。
それはザ・マッド・カプセル・マーケッツというバンドの「GOVERNMENT WALL」という曲。

いわゆる「癒し系」でも「ヒーリングミュージック」でもない、ザ・マッド・カプセル・マーケッツの音楽。

宮下さんは出合いの瞬間と、音楽にふれていく中での心境の変化を次のように綴っています。


「何も期待せずに店に入ったのに、すぐに足が止まった。(中略)それは、激しくて、美しい、何かだった。」

「それからは、そのCDばかりを聴いて過ごした。マッド・カプセル・マーケッツとは、日本のロックバンドで、かなりハードだ。それまでの私だったら聴かなかっただろう。でも、沁みた。マッド・カプセル・マーケッツを聴いている間だけ、息をつくことができた。心が安らかでいられた。(中略)激しいロックが、つんざくような音が、心の深いところにやさしく届いた。」


僕はここの部分を読むたびに「激しいロック」が「やさしく届」くというのが、どんなものなんだろう、と想像してしまいます。
きっとそれは表面的な癒しとかじゃなく、もっと根源的な何かなんだろうと感じます。

音楽が、他人のいう評価やジャンル分けとは別に、自分にとってどう響くという根源的な何かに繋がっている……そんな豊かな予感に満ちています。

中学生に向けて書かれた本書「学校では教えてくれない 人生を変える音楽」。
音楽との新たな出合いを約束してくれる一冊です。

ご興味ある方は是非ご一読下さい。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は7月4日です。
読んで頂きありがとうございました。



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by mamesyakuhachi | 2016-06-27 00:01 | 複数著者など | Comments(0)


今週は二冊紹介します。

どちらも人との繋がりの中で出会った本です。


『イラストで読むルネサンスの巨匠たち』杉全美帆子/著(河出書房新社)

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お世話になっているお琴の先生の息子さんからお借りしている本です。

その息子さんは現役美大生なので、絵画についての知識がとても豊富。

僕の方から「絵画入門として読みやすい本はないですか?」と伺うと、なんとその場で二冊ほど貸して下さいました。

そのうちの一冊がこちらの『イラストで読むルネサンスの巨匠たち』。
タイトルの通りイラストが豊富で、しかもオールカラー。
漫画仕立てで巨匠たちの足跡をたどることができます。

ルネサンスといえば、遠近法の発展や、解剖学的な見地からのリアリズムの追及・・・
という事が言われるようですが、こういった事を文章だけで言われても、読みこなすのは大変です。
なので、イラスト付きはとても助かります。

この本では、ほのぼのとした漫画でルネサンスを噛み砕いて紹介をしてくれています。
そして、巨匠のエピソードも豊富。
「ミケランジェロはダヴィンチの事が嫌いだった」
「フィリッポ・リッピは女好きで女性を描くのが得意」
などなど。巨匠の人間性を覗けるのも本書の魅力です。

お借りしているもう一冊『ペンブックス1 ダ・ヴィンチ全作品・全解剖。』池上英洋/監修(阪急コミュニケーションズ)も半分くらい読み進めています。

「ダヴィンチやらルネサンスやら、すごいすごいって人は言うけど、いまいち良く分からん!」という方(それは僕です)にオススメです。



『ワセダ三畳青春記』高野秀行/著 (集英社文庫)

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高野秀行さんという作家はそれまで一冊も読んだ事がなかったのですが、読書会で知り合った方からすすめて頂き読了しました。
そもそも、この本を知ったきっかけは今月頭に参加した読書会(池袋天狼院書店でのファナティック読書会)での事でした。

読書会で高野さんの本を情熱的に紹介されている方がいて、興味を抱きました。
その場で僕から「高野さんの本で最初に読んで欲しい本を教えて下さい。」と伺ったところ、

『うーん、とても迷いますねぇ。「ワセダ三畳青春記」かなぁ。ああ、でも「アヘン王国潜入記」もいいし。いや・・・、あっ、そうだ「幻獣ムベンベを追え」も非常に素晴らしいんですよねぇ。決めかねるなぁ・・・・・。』

そのお言葉を聞いた瞬間に「ああこの方の熱量、ハンパじゃない」と思いました。
(ちなみに高野さんの本のタイトルが個性的なのは、高野さんは辺境ライターという肩書で世界各地の誰も行かないような場所を旅してルポをまとめているからです。)

というわけで教えて頂いた中から『ワセダ三畳青春記』を読了。

舞台は著者が20代を過ごした早稲田にある野々村荘という風呂無しアパート。そこで繰り広げられる笑いと涙のエピソード集をまとめた本になっています。

守銭奴というあだ名のドケチな住人、司法試験合格を目指して10年以上浪人し続けるケンゾウさん、溜まり場目的で集まってくる早稲田の後輩たち。
個性的な住人や学生たちのエピソードも笑えるのですが、泣けるのは大家のおばちゃんのエピソードです。(ピンポン大会のエピソードなど感動的です。詳しくは是非実際に読んで欲しいです。)

読了後は二冊目『アヘン王国潜入記』を図書館で予約。

未知の作家との出会い、紹介して頂いた方に感謝です。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は2月22日です。
読んで頂きありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2016-02-15 00:01 | 複数著者など | Comments(0)

新年あけましておめでとうございます。


本年も読書ブログ「本と尺八」を毎週月曜日に更新していきたいと思っております。


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『いとしい たべもの』森下典子/文・画(世界文化社)

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僕は〈どん兵衛〉が好きです。


特に〈どん兵衛きつねうどん〉が好きです。


そして、本書の著者も〈どん兵衛〉好き。


『無性にカップ麺が食べたくなる・・・・・。
〈どん兵衛きつねうどん〉だ。〈どん兵衛〉じゃなきゃ駄目なのだ。/たいてい、午前一時過ぎである。/おつゆのしみた「おあげ」や白くて平べったい麺の幻が、目の前に迫って、私を駆り立てる。
「あぁ~っ、もう駄目!」』


あぁ~


うあぁ~


僕も駄目っす。


ずるずる。


ずるずる。


なんでどん兵衛はこんなに旨いんでしょうか・・・。
学生時代によく食ってたなぁ・・・。

ずるずる。


ずるずる。


えーと、いったん食べるのはやめにして・・・、本の話です。


好きな食べ物って、それにまつわる思い出がつきものですよね。
それを食べると昔の事や一緒に食べた人や場所を思い出します。

著者もそうです。
例えば塩鮭。

『「こらっ、先に皮を剥がして食べるのは、やめなさい」
と、母によく叱られた。
私は、皮だけの塩鮭があったらどんなにいいかと思い、「塩鮭の皮の厚みが三寸あったら・・・・」という祖母の言葉を思い出した。』


あるいはメロンパン。

『母がそのパン屋さんでパンを切ってもらうたび、大人の客の間をかき分けて、菓子パンの棚の前に行った。欲しいと口に出さない分、全身でメロンパンを想った。/
食べたことがないのに私はメロンパンのおいしさを確信した。
町で見かけた美しい女の子に恋をした少年が、まだ一言の言葉すら交わしたことがないのに、
「僕にはわかる。彼女はやさしくて、ナイーブなんだ」
と、思い込むのに似ていた。』


子供時代の思い出、とりわけ親に叱られたり、欲しいのに買ってもらえなかったりという思い出は、より強く食べ物の印象を残しますよね。


そして、本書の良いところは、好きな食べ物と一緒に家族との思い出を結びつけながら、ちょっとほろりとさせるところ。


『この四半世紀の間に、私も、私の周りも変化していた。私はライターの仕事を始め、父の反対を押し切って家を出た。幾度か恋が始まり、終わった。
家族も変わった。父が他界し、弟が結婚して家を出、祖父母を見送り、母は年を取った。/
子供の頃は、
(茄子には、味もない、香りもしない)
と、思っていたが、こうして味わってみると、味があり香りもある。それは、甘い、辛いというような平板なものではなく、複雑で繊細な、味の機微である。』


食べ物を味わいながら、それを通して見える家族の風景。


『たべものの味にはいつも、思い出という薬味がついている』


皆さん、お正月には何を食べましたか?


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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は1月11日です。

読んで頂きありがとうございました。



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by mamesyakuhachi | 2016-01-04 00:01 | 森下典子 | Comments(0)

明日から12月。年末。ワクワクします。

12月は今年の総決算記事を投稿します。

以下予定です。

【12月7日(月)】
紹介しきれなかった本をまとめて発表/2015年上半期

【12月14日
(月)
紹介しきれなかった本をまとめて発表/2015年下半期

【12月21日
(月)
2015年ベスト本&今年紹介した本一覧

【12月28日
(月)
読書所感&来年読みたい本

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今週の本です。

『読者は踊る』斎藤美奈子/著(文春文庫)

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文芸評論家・斉藤美奈子による書評集です。

突然ですが、皆さんはどういった基準で本を購入しますか?

様々な理由があるとは思いますが、以下のような項目に心当たりはありませんか?

○芥川賞・直木賞の受賞作くらいは読んでおいた方がいいような気がする。
○「知の最前線」「時代を読むキーワード」といった言葉に弱い。
○売れている本のベストテンが気になる。
○話題のタレント本を買うのはちょっと抵抗がある。
○似たような本が何冊もあったら、著者の肩書きと経歴を見て選ぶ。

これらの項目に心当たりがある方。
そのような方は「踊る読者」候補生、もしくは既に立派な「踊る読者」です。
(ちなみに本文では20個のチェック項目があり、僕は12個該当で「かなり重度の踊る読者」でした・・・。)

ところで、世間ではよくこんな事を耳にします。
「人は外見や肩書きじゃない、中身だよ」と。
でも現実の世の中では美人やイケメン、「東大卒」や「~賞受賞」が大人気。

見かけに惑わされることなく本物に出会いたい。
そんな読書ライフ入門として読みたい一冊です。


本書の特長は二点。

①権威や肩書きに捕われずに批評
②多様な視点からの判断

それぞれ本文を引用しながら紹介します。

①【権威や肩書きに捕われずに批評】
「ごくごく一般的な、そんじょそこらの読者代表」と自称する著者。
世間の一読者として、権力や人気におもねることなく果敢に(時には笑いと皮肉をもってバッサリと)書評をしています。

1995年に発売され、650ページ超の大著に関わらずベストセラーとなった『ソフィーの世界』(ヨースタイン・ゴルデル著)については、
『かろうじて読み進んでいけるのは、ミステリー仕立ての謎解きが仕掛けられているからである。哲学の入門書として買われ、結果的にはファンタジー小説として読まれている。それが『ソフィーの世界』の人気の実態ではないかと思う。』

もう一つ。
「カラオケ化する文学」というテーマにて。芥川賞・直木賞については、
『両賞は、新しい作品を見きわめて励ますためのものではない。新人作家の中から自分たちの仲間(遠藤注:選考委員)に入れてやってもよさそうな人材を一方的にピックアップする、一種の就職試験』

などなど。

しかしながら、これだけでは著者による主観混じりの単なる悪口になる恐れがあります。

そうならない為に②の立場が大切になります。

②【多様な視点からの判断】
本書では一つの本を書評するのではなく、一つのテーマに沿って様々な立場(推進派、反対派、擁護派、中立派など)の書籍を複数冊を読み込んで書評しています。

例えば教育問題を取り上げた「学校のスリム化で得をするのは親か子どもかお役所か」というテーマ。
著者が取り上げた書籍を図にしてみると、

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著者はこのように必ず複数冊を読み込み、様々な視点から一つのテーマを掘り下げていきます。
(なお、この図は遠藤が作成した簡略図です。実際はもっと入り組んでいます。)

様々な視点の本を読み込むことで得られるもの。
それは物事への深い理解です。
単なる情報だったものが立体的な知識や知恵に繋がります。
それらを獲得する事が読書の醍醐味であり、一つの目的といえるでしょう。

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・と、まぁこのように本書の良さを書いている途中の僕ですが、皆さん何かに気づきませんか?

・・・

そうなんです。

僕はいつの間にか本書『読者は踊る』にすっかり「踊らされている」のです。
本の中身に疑問を持たずに、すぐ納得する態度。これは正に「踊る読者」。

ああああ、本末転倒。

・・・うーむ、まだまだ「踊る読者」卒業までは時間がかかりそうです。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は12月7日で「紹介しきれなかった本をまとめて発表/2015年上半期」を投稿します。

読んで頂きありがとうございました。


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by mamesyakuhachi | 2015-11-30 09:51 | 斉藤美奈子 | Comments(0)

『ぼくのいい本こういう本』松浦弥太郎/著(朝日文庫)

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久しぶりに良い書評集に出合いました。

選書の良さはもちろん、僕にとって一番大切なポイントである「この本が好き。」という素朴な喜びに溢れた書評集でした。

この本の著者は「暮しの手帖」の元編集長であり古書店「COW BOOKS」の店主、松浦弥太郎さんです。
詩や美術、文学を愛し、民芸品や日常の暮らしにも優しい眼差しを持つ著者。
やわらかな文体からは、本を心から愛している著者の姿が想像できます。

『箱から本を取り出す。すっと抜ける感触に笑みがこぼれる。職人による手貼りの箱ならではの滑らかさ。クリーム色の表紙に四角い朱色が配置され、その中に活版の題字が行儀よく収まっている。本の心地よい重さ。指でところどころを触りたくなる。』
(133ページ)

本の手触りや温もりを身近に感じます。
そして、本の紹介と一緒に添えられる季節を感じる文章がとても心地よいのです。

例えば、こんな文章。

『本の表紙を彩る桃色の空には雪の結晶が舞っている。今日ぼくは「私の墓は 日塔貞子詩集」を手にして出かける。だんだんと夏がやって来ている。』(51ページ)

もう一つ引用します。

『ほのあたたかい日のぬくみを感じながら、冬の散歩から帰ってくると、家のポストに小さな包みが届いていた。開けてみるとそれは、松林誠さんの版画集「犬と花」だった。ぼくはうきうきしながら本を開いた。』(138ページ)

四季の移ろいと日常の風景、そして本の佇まいが美しく調和しています。
やさしく丁寧な文章からは本と過ごす日々のあたたかさを感じます。

そして本書の解説はイラストレーターの浅生ハルミンさん。彼女も大の本好きです。
とても共感できた一文がありました。

『ひとによって様々の本の読み方があり、紹介のしかたがあり、それでよいのだ、と確信した。この本は私に、気の合う友だちが「こんな本があったんだよ」とおしゃべりしている愉しさをもたらしてくれた。』(241ページ)

「この本が好き。」という気持ちがこもった書評集に触れると心はじんわりとあたたかくなります。
読後は読みたい本がたくさん増えました。
読むのが楽しみです。今からワクワクします。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は8月10日です。
読んで頂きありがとうございました。



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by mamesyakuhachi | 2015-08-03 00:01 | 松浦弥太郎 | Comments(0)

出演コンサートのご案内です。

【第六回 港区文化芸術フェスティバル】
《日時》 2/22(日) 開場18:00/開演18:30
《場所》 サントリーホール・ブルーローズ(港区赤坂1-13-1)
《出演》 演奏:ワールドバンブーオーケストラ 竹楽器&合唱:区民の皆さん
《プログラム》 「渇きの海」「サウンドオブミュージックメドレー」「イッツショータイム」etc

港区主催のコンサートで、無料公演です。
なおチケットは事前申込が必要です。
観覧希望の方は、03-3578-2342(港区地域振興課文化芸術振興係)まで直接ご連絡して下さい。
なお港区の公式HPのコンサート情報サイトはこちら

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今週の本です。

森下典子 『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』 (飛鳥新社)
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お茶とは、そういう「生き方」なのだ。そうやって生きれば、人間はたとえ、まわりが「苦境」と呼ぶような事態に遭遇したとしても、その状況を楽しんで生きていけるかもしれないのだ。』(本文より)

偶然、図書館で見つけ、その佇まいに惹きつけられました。

本書は茶道に関する本ですが、茶道だけではない本です。
茶道を通して知った四季の美しさ、掛け軸や焼き物の魅力。
そして、なぜ茶道を習い、なぜお茶を淹れるのか。

そんな普遍的な問いに対し、著者は自身の人生観と重ねながら美しく叙情的に綴っています。

著者は茶道を通して様々なことを感じ、学んでいきます。
過去や未来にとらわれすぎる事なく現在を生きるという事。
自分の欠点や短所とどう付き合って、そして受け入れていくのかという事。

タイトルの『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』とは『毎日がいい日』という意味です。
その言葉を単なる「言葉」としてだけではなく「実感」にまで高めた著者。

経験と実感に裏打ちされた文章だからこそ、著者の感じた迷いや喜びが読者の心に響きます。

胸の熱さと、言葉の追いつかない虚しさと、言葉にしてシラけてしまうことの恐れが、せめぎあいながら、沈黙という井戸の中をのぞいている。そのやるせない感情と、台無しにしたくないという配慮を共有しながら、静かに並んで座っている。

お茶とともに有る人生の趣。そして、文章から立ちのぼる著者の誠実さ。

とても素敵な本でした。

今日はこれにて以上です。
毎週月曜日に更新。
次回は2月23
日です。

読んで頂きありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2015-02-16 01:48 | 森下典子 | Comments(0)

今年もあと3日。

ワクワクする年末もあと3日です。

今日は年の瀬らしく「今年一番印象に残った本」を紹介します。

今年は比較的たくさん本を読みました。
基本的に好きな本ばかり読むので、ジャンルに偏りがあるのですが、それでも「一番」となると決めるのが結構難しい・・・。

余談ですが、例えば人に「一番おすすめの本を教えて」と言われた時は迷います。
その人の趣味や考え方、本に馴れている度合いによっても薦めたい本は変わるし、「自分が好きな本」=「人に勧めたい本」ではない事もあります。
選書に迷いながらも、念頭にあるのは本を好きになって欲しいという事です。
全部読まなくてもいいし、好きな所だけ楽しむ読書もいい。
世界的名著や難しい理論書を無理に読む必要もないと思います。

読書が自由で楽しい時間であって欲しいです。

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佐野洋子「シズコさん」(新潮文庫)

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「よー子さん元気ですか?」
天国の佐野洋子さんに親しみを込めて「よー子さん」と僕は問いかけます。


偉大な作家の佐野洋子さん。
だけど、たぶん普段の佐野洋子さんはそんな雰囲気を少しも感じさせない人で、天性の素直さを持った人だと思ってます。

この本はそんな「よー子」さんと、認知症になった母親との事を書いたエッセイです。


「私は母が嫌いだった」というよー子さん。

「金で母を捨てた」というよー子さん。

ストレートでぶっきらぼうで少しそっけない。
でも、とてもやさしいよー子さん。

よー子さんの文章にふれるたび、よー子さんの本に出会えて良かった。って思います。

よー子さん元気ですかー?
僕は元気で何とかやってます~。


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今年このブログで紹介した本の一覧です。

【1月】
松本大洋「Sunny」(小学館IKKICOMIX)
角田光代/著、近松門左衛門/原作「曽根崎心中」(リトルモア)
さくらももこ「神のちから」(小学館)
吉本ばなな「アムリタ」(新潮社)
筒井康隆「最後の喫煙者」(新潮文庫)
稲垣足穂「一千一秒物語」(新潮文庫)
【2月】
上原隆「雨にぬれても」(幻冬舎アウトロー文庫)
土屋賢二「われ笑う、ゆえにわれあり」(文春文庫)
枡野浩一「石川くん」(集英社文庫)
【3月】
中島らも「心が雨宿りする日には」(青春出版社)
日本エッセイストクラブ編「耳ぶくろ」(文春文庫)
西加奈子「しずく」(光文社)
ユ・テウン/著、木坂涼/訳「きんぎょ」(セーラー出版)
吉永マサユキ「若き日本人の肖像」(リトルモア)
【4月】
益田ミリ「青春、手遅れ」(角川学芸出版)
中島らも「ガダラの豚」(集英社文庫)
デヴィッド・カリ、セルジュ・ブロック、 小山薫堂/訳 「まってる。」(千倉書房)
想田和宏「なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか」(講談社現代新書)
【5月】
穂村弘 「本当はちがうんだ日記」(集英社)
長谷川義史「ぼくがラーメンたべてるとき」(教育画劇)
みうらじゅん「とんまつりJAPAN」(集英社文庫)
能町みね子「雑誌の人格」(文化出版局)
フランソワーズサガン「悲しみよこんにちわ」(新潮文庫)
山田かおり「株式会社家族」(リトルモア)
澁澤龍彦「世界悪女物語」(文春文庫)
村上龍「イン ザ・ミソスープ」(幻冬舎文庫)
沢木耕太郎「深夜特急」(新潮文庫)
西加奈子「通天閣」(筑摩書房)
【6月】
渡邉良重(絵)高山なおみ(文)「UN DEUX(アン ドゥ)」(リトルモア)
穂村弘 東直子 沢田康弘「ひとりの夜を短歌とあそぼう」(角川ソフィア文庫)
村上春樹「風の歌を聴け」(講談社文庫)
ピエール・バイヤール/著、大浦康介/訳「読んでいない本について堂々と語る方法」(筑摩書房)
松田青子「スタッキング可能」(河出書房新社)
山下清「日本ぶらりぶらり」(ちくま文庫)
江口歩「エグチズム」(新潟日報事業社)
坂本大三郎「山伏と僕」(リトルモア)
ヘルマンヘッセ「庭仕事の愉しみ」(草思社文庫)
石田徹也「石田徹也遺作集」(求龍堂)
【7月】
小山田浩子「工場」(新潮社)
津村記久子「カソウスキの行方」(講談社)
武者小路実篤「友情」(新潮文庫)
ヘルマンヘッセ/著、松永美穂/訳「車輪の下で」(光文社新訳文庫)
サンテグジュペリ、野崎歓/訳「ちいさな王子」(光文社新訳文庫)
糸井重里「羊どろぼう」(Hobonichi Books)
阿部はまじ/文、平澤まりこ/画「森へいく」(集英社)
ラチー・ヒューム/作、長友恵子/訳「ゆうかんなうしクランシー」(小学館)
M.B.ゴフスタイン/作、末盛千枝子/訳「ゴールディーのお人形」(すえもりブックス)
【8月】
益田ミリ「すーちゃん」(幻冬舎文庫)
又吉直樹「東京百景」(ヨシモトブックス)
又吉直樹「第2図書係補佐」(幻冬舎よしもと文庫)
織田作之助「夫婦善哉」(新潮文庫)
エドワード・ゴーリー/著、柴田元幸訳「まったき動物園」(河出書房新社)
エドワード・ゴーリー「キャッテゴーリー」(河出書房新社)
こうの史代/著、「この絵本が好き!」編集部/編「あのとき、この本」(平凡社)
【9月】
町田康「夫婦茶碗」(新潮文庫)
タナカカツキ「サ道」(PARCO出版)
村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(文芸春秋)
団鬼六「真剣師 小池重明」(幻冬舎アウトロー文庫)
古井由吉「杳子」(新潮文庫)
町田康「きれぎれ」(文春文庫)
安部公房「砂の女」(新潮文庫)
星新一「明治・父・アメリカ」(新潮文庫)
林明子「こんとあき」(福音館書店)
うみのさかな、宝船蓬莱「幕の内弁当」(角川文庫)
ナディーヌ・ブラン・コム/文、オリヴィエ・タレック/絵、磯みゆき/訳「ちいさいきみとおおきいぼく」(ポプラ社)
乙一「暗いところで待ち合わせ」(幻冬舎文庫)
【10月】
佐々木マキ「ねこ・こども」(福音館書店)
太宰治「東京八景(「走れメロス」より)」(新潮文庫)
太宰治「斜陽」(角川文庫)
原田マハ「楽園のカンヴァス」(新潮社)
穂村弘「整形前夜」(講談社)
有川浩「阪急電車」(幻冬舎文庫)
チャールズ・ディケンズ「クリスマス・キャロル」(光文社古典新訳文庫)
森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」(角川書店)
【11月】
上原隆「にじんだ星をかぞえて」(朝日文庫)
パウロ・コエーリョ「アルケミスト」平尾香/画、山川紘矢・山川亜希子/訳(角川文庫)
よしもとばなな「ハードボイルド/ハードラック」(幻冬舎文庫)
吉村昭「海も暮れきる」(講談社文庫)
中村文則「銃」(新潮社)
【12月】
西加奈子「サラバ!」(小学館)
三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」(大和書房)
makomo「くつ下」
島本理生「真綿荘の住人たち」(文春文庫)
佐野洋子「シズコさん」(新潮文庫)


今年はこれにて以上です。
毎週月曜日に更新。次回は1月5日です。
読んで頂きありがとうございました。
皆様良いお年を。

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by mamesyakuhachi | 2014-12-29 06:00 | 佐野洋子 | Comments(0)

今年も師走です。

冬になると食べたくなるのは鍋。
湯豆腐でもつまみながら、お猪口で熱燗を飲みつつ本を読みたいです。
・・・想像するだけで顔がほころびます。

ところで最近はスティーブ・ライヒという作曲家の曲を自宅でよく聴いてます。
以前友達から「きっと好きだと思う」と言われた作曲家です。
ちなみにこんなのです。⇒Octet(Eight Lines)
ジャンル分けすればミニマルミュージックという音楽です。
一見無機質で、際限ない繰り返しの音楽。
そこから徐々に浮かんでくる音の繋がり。無機質でも僕には体温を感じます。

三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」(大和書房)
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小説「舟を編む」等で有名な作家、三浦しをんさんによる書評集です。
本(文学も漫画も)好きの三浦さん。本を愛する気持ちに溢れた書評集です。
三浦さんの好きな本だけを集めたという点で好感の持てる本です。

そして三浦さんが第一線で活躍されている作家だけあって、本を紹介する時の言葉の選び方が素敵でした。

少し引用します。
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島本理生「真綿荘の住人たち」(文藝春秋)では
『笑いと、些細なすれちがいと、さりげない共感と反感が空間を満たしている。』

“さりげない共感と反感”ってどういうものでしょう。
そして、それをどういう風に表現しているのか興味が湧いてきます。
作品に流れているであろう登場人物の絶妙な距離感を予想させてくれます。

鬼海弘雄「東京夢譚」(草思社)では
『憑かれたように川面に見入らずにはいられない男性たちの、憔悴と呑気さと不穏とを、私は愛する』

漢字が多用されていて“呑気”もなんだか呑気じゃないです。
“憔悴”“呑気”“不穏”という正も負も混在した複雑さを“愛する”三浦さんの姿勢。
人間愛の予感がします。
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読了したら、気になった本だらけでした。

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年末は炬燵で一人酒しつつ読書にいそしみたいです。

読みたい本が多くてどれから読むか迷いますが・・・

今日はこれにて以上です。

毎週月曜日に更新。次回は12月15日です。

読んで頂きありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2014-12-08 02:00 | 三浦しをん | Comments(0)