人気ブログランキング | 話題のタグを見る

昨日は練馬区立春日町図書館のビブリオバトル部に参加してきました。
・・・って、ビブリオバトル部とは何?
という方の為に説明しますと、ビブリオバトルというのは発表参加者がオススメ本を1人5分で紹介して、どの本が読みたくなったかを競う書評バトルです。
そして春日町図書館にはビブリオバトルをする部活があり、僕はそこの部員なんです。

感想はめちゃくちゃ楽しかったです。
皆さんのオススメ本やそれに関する派生本たち。「こんな本知らなかった!読みたい!」の連続。
発表者の人生観や考え方から語られる一冊のお話は「この本が好き!」という気持ちに支えられているので、すごく伝わってきます。

ちなみに春日町図書館のビブリオバトル部は部員募集中で、どなたでも参加自由です。

次回は夏頃の開催予定。
また、このブログでも紹介したいと思います。

-----------------

コンサートのご案内を一件。ちょっとだけ参加予定です。

5月9日(土)
【えりか祭り... 躍るアホウ】《アラブ・トルコの夜》

『トリツカレ男』いしいしんじ/著 『教団X』中村文則/著 『猫座の女の生活と意見』浅生ハルミン/著_b0145160_19453556.jpg


〈日時〉5月9日(土)開場19時00/開演19時30分
〈出演者〉音楽家:タケザワエツコと仲間たち
笠松泰洋(p.ズルナ、メイ他)和田啓(perc.)竹澤悦子(箏、三味線、歌他)
あらた真生、上田舞香、奥田純子、OBA、白井さち子、JOU、高原伸子、武元賀寿子、HIRO、和中 . . . 他、ダンス: まだ色々、、
〈料金〉当日2,500円(3部構成予定、パフォーマンスのち1時間交流会)
〈場所〉公園通りクラシックス/渋谷区宇田川町19-5東京山手教会B1F(渋谷駅徒歩5分)

ちなみに僕はちょっとだけ参加予定です。
予定調和なし、何が飛び出すかは当日になってからのお楽しみ。

ご予約は会場のホームページからどうぞ。

-----------------

最近読んだものを3冊。
小説やエッセイなどなど。


いしいしんじ「トリツカレ男」(新潮文庫)

『トリツカレ男』いしいしんじ/著 『教団X』中村文則/著 『猫座の女の生活と意見』浅生ハルミン/著_b0145160_1942382.jpg


本を物色する際に、タイトル→装丁→書き出しをチェックします。
この3つが好みであれば、ほぼハズレがないです。
「トリツカレ男」に出会ったのもそんないきさつ。

ちなみに書き出しはこちら

『ジュゼッペはみんなから「トリツカレ男」ってあだなで呼ばれている。
一度なにかにとりつかれちゃうと、もう、ほかのことにはいっさい気がむかなくって、またそのとりつかれかたが、そう、ちょっと普通じゃないんだな。』

冒頭を読んだだけで物語に惹き込まれました。
引っ掛かる部分がある方、必読です。



中村文則「教団X」(集英社)

『トリツカレ男』いしいしんじ/著 『教団X』中村文則/著 『猫座の女の生活と意見』浅生ハルミン/著_b0145160_19422721.jpg


中村文則の作品は「掏摸」や「銃」など僕の好きなものが多いです。
この作家は徹底して人間の「悪」について書いています。
本書「教団X」は昨年末刊行の最新長編であり、人間の闇の部分を強くえぐり出すように書いています。

読書中は少し苦しかったです。
登場人物たちの「悪」の部分(暴力や洗脳、支配、欲望など)に自分の闇を見るようでした。

物語は暗いトーンのまま続くかと思いましたが、最後の最後に光が描かれています。
その光は絶望の中でも他人を励ます一人の登場人物の姿でした。それに心を打たれ、勇気を貰う一方で、でも、なぜ著者は希望を書いたのかについて引っ掛かりました。
著者が描く絶対的な「悪」はいつの時代でも普遍的に存在する圧倒的な闇です。それでもまだ希望を捨てずに励まし続ける登場人物の言葉は陳腐で安易な励ましではないはずだと考えながらも、はっきりした答えは出ませんでした。

いつかまた再読したい作品です。



浅生ハルミン「猫座の女の生活と意見」(晶文社)

『トリツカレ男』いしいしんじ/著 『教団X』中村文則/著 『猫座の女の生活と意見』浅生ハルミン/著_b0145160_19424761.jpg


妄想が織りなす魅惑のカオスワールドです。
古本と猫を愛する著者浅生ハルミンが過去(1994年~2008年)に発表したエッセイと読書日記をまとめた本です。

特に読書日記の選書は個性的。
青少年向けのおまじない本「霊感少女入門」やノストラダムスの大予言を彷彿させる「SOS地底より」、極めつけは他人の家計簿「明るいくらしの家計簿1962年」など…。
珍本奇本ばかり。
著者にとっての「本」は「紙を冊子状に束ねた物」という認識であり、それであれば何でもあり。
浅生ハルミンワールドにどっぷり浸かれば蟻地獄のようにズルズルと引き込まれます。


今週はこれにて以上です。
毎週月曜日に更新。
次回は5月4日。
読んで頂きありがとうございました。

# by mamesyakuhachi | 2015-04-27 01:35 | 複数著者

フェイスブック始めました。

自分のブログ「本と尺八」の更新とリンクさせたのでフェイスブックからでも同じ記事を閲覧できるようになっています。

ちなみにフェイスブックから見ている方にご案内ですが、僕のブログ「本と尺八」は毎週月曜日に定期更新で、読書日記を中心に、たまに音楽活動についても書いています。
本来のブログページには過去の記事や本の著者・ジャンル別インデックスもありますので興味ある方はどうぞご覧下さい。

なおフェイスブックの僕のページはこちら

--------------------------
今週の本です。

林修『林修の「今読みたい」日本文学講座』(宝島社)

『林修の「今読みたい」日本文学講座』林修/著_b0145160_22332055.jpg


「今でしょ!」で有名な林先生の著書です。
明治~昭和初期の日本文学の名作を何作か林先生が選び、その作品について解説をしていくスタイルの本です。

紹介されている作品は、夏目漱石や芥川龍之介、太宰治などの日本近代文学の文豪たちの作品。
一言に日本文学といっても様々な書き方やアプローチがあることを改めて知ることができます。

芥川龍之介「蜜柑」にはモノトーンの印象から移り変わる夕暮れの美しさがあり、梶井基次郎「檸檬」には筆者独自の世界観と独創性があり、横光利一「機械」では句読点を抑えた無機質な文章で読み手を惹きつけ、中島敦「悟浄歎異」には沙悟浄の苦しさが著者中島敦の懊悩と重なります。

こういう沢山の様々な作品を一度に読む事は自分にとってすごく意味のある事でした。
なぜかというと、それは多様性を知り、興味を持つことができるからです。
様々な文体やアプローチ方法を知り、それぞれの魅力に触れるたびに、本の世界の自由さと懐の広さを改めて感じます。

そして多様性を認める事は「それぞれの作品にそれぞれ違った魅力がある。だからこそ、それぞれで良い」という個々の違いを認める考え方に繋がっていきます。
とかく他人と比較しがちな僕にとって、多様性を認める捉え方は大切にしたい考え方です。


本書の前書きに印象的な言葉を見つけました。

『全部をわかろうとする必要はありません。むしろわからないことを楽しんでください。』

なるほどそうか。
そう考える事ができれば、どんな本でも楽しむ事ができるし、読書に限らず視野は広がるはずだと感じました。

本書は日本近代文学の入門書としても適しています。
僕はまだまだ日本近代文学には疎いので、これから沢山読んでみたいと感じました。

今週はこれにて以上です。
このブログは毎週月曜日に更新。
次回は4月27日です。

読んで頂き、ありがとうございました。

# by mamesyakuhachi | 2015-04-20 01:00 | 林修

尺八が登場するマンガ発見。

『名人伝(『李陵・山月記』より)』中島敦/著_b0145160_1592457.jpg



俵谷哲典「それいけトン吉!」です。
・・・ちなみに尺八には音階あります。

---------------------

中島敦「名人伝(李陵・山月記より)」(新潮文庫)

『名人伝(『李陵・山月記』より)』中島敦/著_b0145160_1595932.jpg


高校時代の授業で習った山月記。
当時の印象は「難しい漢字ばっかだなぁ」という情けない思い出のみ。
でもいま再読してみたら意外や面白い。
他者へ嫉妬と自己顕示欲の肥大から虎になってしまった主人公の李徴。その悲しさと切なさが他人事には思えず、ラストシーンの李徴の咆哮は胸に迫りました。

そして、この「李陵・山月記」に収められた短編「名人伝」。
こちらがなんとも面白い。
もはやギャグなのです。

主人公は趙の都に住む紀昌(きしょう)という人物。
ある時、弓を極めようと思い立ち名手・飛衛(ひえい)のもとに弟子入りします。
教えを乞いに来た紀昌に飛衛はこのように諭します。

『小をみること大の如く、微をみること著の如くなったならば、来って我に告げるがよい』

つまり「小さいものが大きく見えるようになれば、小さい的も大きく見え、矢を外すことはなくなる。それからまた来なさい」と諭したわけです。まずは目を鍛えなさい、と。
早速、紀昌は自宅に籠もって衣服についた虱(しらみ)を見続ける修行に入ります。
最初は微小に見えた虱でしたが、年月を重ねるにつれ少しずつ大きく見え始めます。
それから三年。
そしていざ外に出てみると…

『彼は我が目を疑った。人は高塔であった。馬は山であった。豚は丘の如く、鶏は城楼と見える。』

・・・おお、すごい進歩。
・・・ってオイ。
それじゃ逆に日常生活に支障きたすのでは・・・。
と、ツッコミたくなる展開。
が、物語はそんなツッコミには関係なく進みます。
そして目を鍛えた紀昌の弓の腕はとんでもないレベルに達していたのです。

『百本の矢を以て速射を試みたところ、第一矢が的に中(あた)れば、続いて飛来った第二矢は誤たず第一矢の括(やはず)に中って突き刺さり、更に間髪を入れず第三矢の鏃(やじり)が第二矢の括にガッシと喰い込む。後矢の鏃は必ず前矢の括に喰入るが故に地に墜ちることがない。瞬く中に、百本の矢は一本の如くに相連なり、的から一直線に続いたその最後の括は猶(なお)弦をふくむが如くに見える。』
(注、括:矢の一端で弦をかける部分)

たぶん絵にするとこんな感じ。(遠藤画)

『名人伝(『李陵・山月記』より)』中島敦/著_b0145160_292544.jpg


おおーすごい
・・・でも、ちょっと待て。
矢自体の重みは・・・?
百本の矢がしならずに真っ直ぐ連なる事ができるって、一体どうなってんの・・・?
・・・いや、まー、もはや物理現象や自然法則までも遥かに超越した恐るべき境地に辿り着いたって事でしょうか。

(ちなみにその場面での師・飛衛の感想は『善し!』と一言だけ。弟子が弟子なら師も師だよ・・・)

そして、師から学びつくした紀昌はある日、飛衛に決闘を申し込みます。

その決闘の場面。

『二人互いに射れば、矢はその度に中道にして相当たり、共に地に墜ちた。地に落ちた矢が軽塵をも揚げなかったのは、両人の技が何れも神に入っていたからであろう。』

・・・オイオイ、矢が正面から激突して塵ひとつ落ちないって。
・・・いや、まー、もはや物理現象や自然法則までも(以下同文)

そしてこの後、紀昌はさらに高みを目指し、西の山に住むと言われる甘蠅(かんよう)老師を尋ね更に修行を重ねます。
そして9年後、紀昌は遂に弓を極めます。
それがこの物語の結末になるのですが、紀昌がどのような境地に至ったのか是非読んで確かめてみて下さい。

「堅苦しい作家」とばかり思っていた中島敦に親しみを覚える短編でした。

今週はこれにて以上です。
毎週月曜日に更新。
次回は4月20日。
読んで頂きありがとうございました。

# by mamesyakuhachi | 2015-04-13 02:30 | 中島敦

『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』棚橋弘至/著_b0145160_22385850.jpg



今週もピアノ弾いてます。

気に入ったフレーズを書き留めながら。
CD完成までコツコツ地道な作業です。

ところで先日は師匠である田辺頌山先生のレッスンを受けてきました。
数ヶ月前から練習しても出来ない事を相談した上でのレッスン。
自分で悩んだ期間がある分、先生の言葉と演奏に納得できる事が沢山ありました。
やはりレッスンには準備が必要です。
そして復習を頑張らねば。

---------------------

棚橋弘至「棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか」(飛鳥新社)

『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』棚橋弘至/著_b0145160_22401076.jpg



前向きな人は苦手なんです。
でも、前向きさの中にその人の葛藤や他人への気遣いを見ると好感を抱きます。

プロレスについて、みなさんはどんな印象を持っていますか。

僕は「汗くさい」「格闘技の名を借りたお芝居」「一昔前のもの」というイメージでした。

本書の著者は新日本プロレス所属のプロレスラー棚橋弘至選手です。
棚橋選手は低迷するプロレス人気の復活と過去の栄光からの脱却に挑戦していきます。

新日本プロレスには黄金時代がありました。
アントニオ猪木に代表されるスター選手の存在、ゴールデンタイムのテレビ放送。
安定した人気と放映収入で試合会場は満員の観客でひしめいていました。

しかしながら、1990年代後半からK-1に代表される総合格闘技の台頭で人気に陰りが見えていきます。

それに伴うテレビ放送の打ち切り、追い打ちをかけるような人気レスラーの引退。
「昔は良かった」「プロレスは終わった」という声が内外から聞こえてくるようになります。

著者が過ごした20代、それはプロレスの低迷期でした。
ガラガラの試合会場、ブーイングの嵐、経営母体の新日本プロレスは旧態依然とした態度。

そんな環境の中でも著者は「会社が駄目だから」「不景気だから」と他人のせいにせず「何か俺にできる事はないのか」「きっと良くなる日が来る」と信じ続けます。

ウェイトトレーニングの改善と筋肉の作り方や魅せ方の研究、美しくも迫力のある技の練習、闘う意味を考えた対戦カードの組み方、そしてファンサービスを怠らず地方営業でも全力をつくす事。

地道で時間がかかる作業。すぐには結果には結び付きません。
著者は弱さに流れそうになりながらも踏み止まり、逆境の中で信念を通します。

やがてブーイングばかりだった会場からは少しずつ棚橋コールが聞こえてくるようになっていきます。

そしてデビューから10年以上たち、遂に辿り着いた満員の東京ドームのリング。
観客と笑顔と歓声、そして心からの棚橋コール。
その中でリングに立った著者の喜びは察して余りあります。


本書の中で著者は「プロレスは負けて輝く事がある」と言います。
そして「いかなる困難に直面しても、鍛えて立ち向かって、受けて、受けて、最後に逆転する。」とも。

努力をしても結果がついてこない事は有ると思います。
でも僕は、人生で最も大切な事は諦めずに努力を続ける事だと思っています。

結果にめげず勝利を信じ、逆境を乗り越えて努力し続ける事。
それは人生の中で最も大切な資質だと思います。

プロレスラーが負けても輝いているのは困難の中でも前を向いているからです。

努力と勝利への執念に裏打ちされている著者の言葉たち。

太陽のような眩しさを感じる一冊でした。


今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は4月13日です。
読んで頂きありがとうございました。

# by mamesyakuhachi | 2015-04-06 00:57 | 棚橋弘至

『たいようオルガン』荒井良二/著_b0145160_8515077.jpg

ピアノの練習中・・・ではありません。
ピアノをたどたどしく弾きながら作曲をしているんです。

今年中にオリジナルアルバムを一枚作りたいと考えています。

地味な作業で時間がかかります。

-----------------

ところで電車に乗っていて気になる事があります。
それは他人が読んでる本のタイトルや著者。
自分の好みにあった本を読んでいると嬉しくなります。

一年くらい前に地下鉄で想田和弘「精神病とモザイク」を読んでいる若い女性がいました。
『たいようオルガン』荒井良二/著_b0145160_8523751.jpg


僕は心の中で「おおお!そ、想田和弘!なんたる俺好みの選書!」と叫んでました。

先日は柴田元幸編集の雑誌を読んでいる同世代の男性に遭遇。
『たいようオルガン』荒井良二/著_b0145160_852546.jpg


同じく心の中で「おおお!し、柴田元幸!もしや、あなたも好きなんですかっ!?」と叫んでました。

どちらの場合も勿論実際に声をかけたりしてません。
前者はナンパ、後者は不審者扱いになる可能性有りです。
でも降車した後に残る一抹の後悔。
次に「おおお!」と思ったら声かけてみたい・・・と、ジリジリ考えています。

-----------------

荒井良二「たいようオルガン」(アートン)
『たいようオルガン』荒井良二/著_b0145160_8542211.jpg


これは「おおお!」です。
電車でこの絵本を読んでる人がいたら声をかけたいです。
(電車で絵本を読む人はめったにいないでしょうが…)

それくらい好みの絵本です。

瑞々しく跳ね回るような躍動感。
生命力溢れる鮮やかな色彩。
今にも駆け出しそうな美しい世界とリズミカルな言葉たち。

たいようオルガンの暖かさの中でゾウバスは生き生きと走り続けます。

一読して好きな絵本になりました。

未読の方、ぜひ読んでみて下さい。

・・・そして、もし気に入ったら電車で恥ずかしげなく開きましょう。

見かけたら声をかけさせて頂きますから!

今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は4月6日。
読んで頂きありがとうございました。

# by mamesyakuhachi | 2015-03-30 01:49 | 荒井良二