『ぼくのいい本こういう本』松浦弥太郎/著(朝日文庫)

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久しぶりに良い書評集に出合いました。

選書の良さはもちろん、僕にとって一番大切なポイントである「この本が好き。」という素朴な喜びに溢れた書評集でした。

この本の著者は「暮しの手帖」の元編集長であり古書店「COW BOOKS」の店主、松浦弥太郎さんです。
詩や美術、文学を愛し、民芸品や日常の暮らしにも優しい眼差しを持つ著者。
やわらかな文体からは、本を心から愛している著者の姿が想像できます。

『箱から本を取り出す。すっと抜ける感触に笑みがこぼれる。職人による手貼りの箱ならではの滑らかさ。クリーム色の表紙に四角い朱色が配置され、その中に活版の題字が行儀よく収まっている。本の心地よい重さ。指でところどころを触りたくなる。』
(133ページ)

本の手触りや温もりを身近に感じます。
そして、本の紹介と一緒に添えられる季節を感じる文章がとても心地よいのです。

例えば、こんな文章。

『本の表紙を彩る桃色の空には雪の結晶が舞っている。今日ぼくは「私の墓は 日塔貞子詩集」を手にして出かける。だんだんと夏がやって来ている。』(51ページ)

もう一つ引用します。

『ほのあたたかい日のぬくみを感じながら、冬の散歩から帰ってくると、家のポストに小さな包みが届いていた。開けてみるとそれは、松林誠さんの版画集「犬と花」だった。ぼくはうきうきしながら本を開いた。』(138ページ)

四季の移ろいと日常の風景、そして本の佇まいが美しく調和しています。
やさしく丁寧な文章からは本と過ごす日々のあたたかさを感じます。

そして本書の解説はイラストレーターの浅生ハルミンさん。彼女も大の本好きです。
とても共感できた一文がありました。

『ひとによって様々の本の読み方があり、紹介のしかたがあり、それでよいのだ、と確信した。この本は私に、気の合う友だちが「こんな本があったんだよ」とおしゃべりしている愉しさをもたらしてくれた。』(241ページ)

「この本が好き。」という気持ちがこもった書評集に触れると心はじんわりとあたたかくなります。
読後は読みたい本がたくさん増えました。
読むのが楽しみです。今からワクワクします。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は8月10日です。
読んで頂きありがとうございました。



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by mamesyakuhachi | 2015-08-03 00:01 | 松浦弥太郎 | Comments(0)