新年あけましておめでとうございます。


本年も読書ブログ「本と尺八」を毎週月曜日に更新していきたいと思っております。


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『いとしい たべもの』森下典子/文・画(世界文化社)

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僕は〈どん兵衛〉が好きです。


特に〈どん兵衛きつねうどん〉が好きです。


そして、本書の著者も〈どん兵衛〉好き。


『無性にカップ麺が食べたくなる・・・・・。
〈どん兵衛きつねうどん〉だ。〈どん兵衛〉じゃなきゃ駄目なのだ。/たいてい、午前一時過ぎである。/おつゆのしみた「おあげ」や白くて平べったい麺の幻が、目の前に迫って、私を駆り立てる。
「あぁ~っ、もう駄目!」』


あぁ~


うあぁ~


僕も駄目っす。


ずるずる。


ずるずる。


なんでどん兵衛はこんなに旨いんでしょうか・・・。
学生時代によく食ってたなぁ・・・。

ずるずる。


ずるずる。


えーと、いったん食べるのはやめにして・・・、本の話です。


好きな食べ物って、それにまつわる思い出がつきものですよね。
それを食べると昔の事や一緒に食べた人や場所を思い出します。

著者もそうです。
例えば塩鮭。

『「こらっ、先に皮を剥がして食べるのは、やめなさい」
と、母によく叱られた。
私は、皮だけの塩鮭があったらどんなにいいかと思い、「塩鮭の皮の厚みが三寸あったら・・・・」という祖母の言葉を思い出した。』


あるいはメロンパン。

『母がそのパン屋さんでパンを切ってもらうたび、大人の客の間をかき分けて、菓子パンの棚の前に行った。欲しいと口に出さない分、全身でメロンパンを想った。/
食べたことがないのに私はメロンパンのおいしさを確信した。
町で見かけた美しい女の子に恋をした少年が、まだ一言の言葉すら交わしたことがないのに、
「僕にはわかる。彼女はやさしくて、ナイーブなんだ」
と、思い込むのに似ていた。』


子供時代の思い出、とりわけ親に叱られたり、欲しいのに買ってもらえなかったりという思い出は、より強く食べ物の印象を残しますよね。


そして、本書の良いところは、好きな食べ物と一緒に家族との思い出を結びつけながら、ちょっとほろりとさせるところ。


『この四半世紀の間に、私も、私の周りも変化していた。私はライターの仕事を始め、父の反対を押し切って家を出た。幾度か恋が始まり、終わった。
家族も変わった。父が他界し、弟が結婚して家を出、祖父母を見送り、母は年を取った。/
子供の頃は、
(茄子には、味もない、香りもしない)
と、思っていたが、こうして味わってみると、味があり香りもある。それは、甘い、辛いというような平板なものではなく、複雑で繊細な、味の機微である。』


食べ物を味わいながら、それを通して見える家族の風景。


『たべものの味にはいつも、思い出という薬味がついている』


皆さん、お正月には何を食べましたか?


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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は1月11日です。

読んで頂きありがとうございました。



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by mamesyakuhachi | 2016-01-04 00:01 | 森下典子 | Comments(0)

出演コンサートのご案内です。

【第六回 港区文化芸術フェスティバル】
《日時》 2/22(日) 開場18:00/開演18:30
《場所》 サントリーホール・ブルーローズ(港区赤坂1-13-1)
《出演》 演奏:ワールドバンブーオーケストラ 竹楽器&合唱:区民の皆さん
《プログラム》 「渇きの海」「サウンドオブミュージックメドレー」「イッツショータイム」etc

港区主催のコンサートで、無料公演です。
なおチケットは事前申込が必要です。
観覧希望の方は、03-3578-2342(港区地域振興課文化芸術振興係)まで直接ご連絡して下さい。
なお港区の公式HPのコンサート情報サイトはこちら

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今週の本です。

森下典子 『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』 (飛鳥新社)
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お茶とは、そういう「生き方」なのだ。そうやって生きれば、人間はたとえ、まわりが「苦境」と呼ぶような事態に遭遇したとしても、その状況を楽しんで生きていけるかもしれないのだ。』(本文より)

偶然、図書館で見つけ、その佇まいに惹きつけられました。

本書は茶道に関する本ですが、茶道だけではない本です。
茶道を通して知った四季の美しさ、掛け軸や焼き物の魅力。
そして、なぜ茶道を習い、なぜお茶を淹れるのか。

そんな普遍的な問いに対し、著者は自身の人生観と重ねながら美しく叙情的に綴っています。

著者は茶道を通して様々なことを感じ、学んでいきます。
過去や未来にとらわれすぎる事なく現在を生きるという事。
自分の欠点や短所とどう付き合って、そして受け入れていくのかという事。

タイトルの『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』とは『毎日がいい日』という意味です。
その言葉を単なる「言葉」としてだけではなく「実感」にまで高めた著者。

経験と実感に裏打ちされた文章だからこそ、著者の感じた迷いや喜びが読者の心に響きます。

胸の熱さと、言葉の追いつかない虚しさと、言葉にしてシラけてしまうことの恐れが、せめぎあいながら、沈黙という井戸の中をのぞいている。そのやるせない感情と、台無しにしたくないという配慮を共有しながら、静かに並んで座っている。

お茶とともに有る人生の趣。そして、文章から立ちのぼる著者の誠実さ。

とても素敵な本でした。

今日はこれにて以上です。
毎週月曜日に更新。
次回は2月23
日です。

読んで頂きありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2015-02-16 01:48 | 森下典子 | Comments(0)