西加奈子「サラバ!」(小学館)

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泣きました。
とまらなかったです。
この物語を今読むことができて、本当に幸せでした。

西加奈子は決して器用じゃないと思います。
物語の展開に整合性を欠いている所だってありました。

でも、そんなこと、どうでも良かったんです。

この「サラバ!」には著者の懸命さと真摯さ、そして「物語を書きたい」という根源的な強い気持ちに溢れています。
この小説について、僕なりに書きたい事がたくさんあります。
でもたくさん過ぎてとても書ききれません。

この小説は「救い」の物語です。
僕と僕以外のたくさんの読者たち、そして何より著者である西加奈子にとっての「救い」の物語です。

著者に惜しみない拍手と賛辞をおくりたいです。


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一つお知らせがあります。

「正論」(産経新聞社発行)という雑誌の今月号に僕の紹介記事が載っています。
(少し個性が強い雑誌ですが…)

作家でコラムニストの上原隆さんの連載「くよくよするなよ」の中で僕が紹介されています。
(記事は340ページ~345ページに掲載)

尺八の出会いと挫折、そして現在のことについて。
上原さんの持ち味である淡々とした感情を抑えた文章で描かれています。

ご興味のある方は読んでみてください。

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今週はこれにて以上です。
毎週月曜日に更新。
次回は3月16日。
読んで頂きありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2015-03-09 02:22 | 西加奈子 | Comments(0)

『通天閣』西加奈子/著

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江古田図書館での知的書評合戦ビブリオバトル。
ビブリオバトルは初参戦。緊張しました。

友達の話を引き合いに出して、そこから小説とリンクさせて・・・みたいな書評にしました。

参加を終えた感想は・・・とっても楽しかったです!思い切って参加して良かったです。

館長さんや司書の方々、バトラーさんや観客の方々、みんな本好きの方ばかり。
その雰囲気だけで嬉しくなります。

特に江古田図書館の館長さんや司書の方々は本にかける並々ならぬ情熱があって、一緒に書棚を作ってみたい気持ちになります。
(僕の素人妄想ですが、一つの思いや感情をテーマにそこから派生していく様々な本をジャンルを取り払って並べてみたい…)

ほんとに本が好きなんだなぁっていう気持ちが一体になった会場。最高でした。

ところで、結果です。

上の写真で手にしてるのは賞状です。

なんと特別賞を頂きました。

「江古田げんき賞」

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チャンプ本にはなれませんでしたが、とても嬉しい特別賞です。

今日の本はビブリオバトルで紹介した小説です。

西加奈子「通天閣」(筑摩書房)

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馬鹿馬鹿しいけど真面目。嘘だけど真実。影であり光。

それが渾然一体となって放たれる通天閣のネオン。

そのネオンは泥臭くて垢抜けないけど、暖かな感情のある光です。
その通天閣を舞台に繰り広げられる男と女とオカマの物語。

それぞれの物語が交錯したり、すれ違ったり、寄り添ったりしながら展開します。

好きでもないオカマに愛の告白をするハメになる男。
その告白で救われるオカマ。
受け身の人生を捨て、自分の人生を歩み始める女。

それぞれがやり場のない痛みを抱えながらも、再生していく物語。
通天閣は今日もギラギラした日立のネオンを輝かせながら大阪の街を見守っています。

「アホやなぁ。でも、そこがめっちゃええやん」

そんな優しい気持ちになれる本です。

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バトラーとして参加しても、観客として参加しても楽しめるビブリオバトルです。
ぜひ多くの人に参加して欲しいです。

そして個人的には、ビブリオバトルや本が自分の音楽活動の一つの方向性になると良いなと思っています。

今日はこれにて以上です。

更新は毎週月曜日。

次回は6月2日です。

読んで頂きありがとうございました。

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by mamesyakuhachi | 2014-05-26 10:16 | 西加奈子 | Comments(4)

『しずく』西加奈子/著

昨日上野公園を歩いていたら、知り合いの三味線奏者の方にばったりお会いしました。

人の多い東京でたまたま知人に会うなんてかなり珍しいです。
芸能人を見る方が少し多いくらいです。(去年は江古田でTOKIOの城島リーダーを見ました)

ところで先月くらいから本の当たりが続いてます。

中島らもに始まって村上龍、西加奈子、西村賢太・・・。それぞれ作風はまったく違いますが、どれも面白くて、ついつい読みこんでしまいます。

ところで図書館で本を借りるときに読み込まれた本かどうかを読まずに知る方法というのを友達から教えてもらいました。
それは背表紙の角度を見るという方法です。

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上と下の本を見比べると分かりますが、上の本は背表紙が30度くらい傾いてます。
一方、下の本は殆ど傾いてません。
本は開いている時間が長くなるほど徐々に傾いていくらしいです。

傾いている → 開かれた時間が長い → 読み込まれた時間が長い

という理論です。



今日紹介する本は上記画像の30度の本です。


西加奈子「しずく」(光文社)

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2007年出版の短編集です。

表題作「しずく」は、言ったら単純なよくある話です。
苦労を共にしてきた男女が仕事によるすれ違いでの別れ。
それをペット(猫)の視点で描いてます。

猫の視点は素直でコミカル。
猫は起きた事はすぐ忘れて、気ままで自由にふらふら。

暗くなりそうな話を、明るくおかしくしてます。

余談ですが、なんか自分自身とはえらい違いです。
何事も物事をストレートに馬鹿正直に感じてしまう自分自身なので、
何かあると分かりやすく凹んでしまいます。

視点変えるだけで楽になるのかもな・・・と思います

・・・が、そういう別な視点を持ったり、自分を俯瞰することが全然できないんですよね。
自分ってどうしてこんなに単純なんだろうとか、結局騙されやすいタイプなんだろうなと思います。


あ、暗くなりかけたので話を本に戻して・・・


猫は飼い主がする事に素敵な名前をつけます。

蛇口から落ちる雫に名前をつける所は、せつなくてあったかいです。

少し泣けました。

猫と飼い主の気持ちが一瞬交わるような、そんな素敵な話です。


今日はここで以上です。

毎週月曜日に更新。次回は3月24日です。

読んで頂きありがとうございました。
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by mamesyakuhachi | 2014-03-17 11:29 | 西加奈子 | Comments(0)

今日の音楽はSAKEROCK「会社員と今の私」です。
アルバム「ホニャララ」に入っている楽曲です。

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ジャケットでSAKEROCKリーダーの星野源が音楽についてインタビューで話していることが印象的でした。

曲名の重要性、たとえば、楽曲にぴったりのタイトルがつくと途端に曲が輝きだしたり、また逆にタイトルから構想が浮かんだりする事。

アルバムタイトル「ホニャララ」については
「“ホニャララ” はまだ言葉になる前の、音楽そのものなんだ。音楽そのものに意味なんてない。だから音楽は、演奏する人にとっても聴く人にとっても、もっと自由であっていい。ホニャララはそんな僕の、独りごとみたいなもの」

SAKEROCKみたいな自由で懐が深い音楽 、良いです。



ところで話は変わり、、、、


前向き、後ろ向き、いつからだったか「人生は前向きに」みたいな事が世の中で流行った時期がありました。
今でもよく使われる言葉です。

この前、東京駅で新幹線を眺めた時に、新大阪に行くときは一番前になる車両は東京行きになると一番後ろになる、と当たり前の事を思いました。

基本的にあまり僕は明るくないからなのか、他人から「前向きになりなよ」と言われる事があります。
でも一方では、心のどこかで「あなたの言う前向きって何ですか」とあまのじゃくに考えたりもします。

昨日まで前だったものが、一夜で後になることもあり得るような気がしてます。

信念とか夢とか面白みのある「後ろ向き」 も良いと思います。
もっと言ったら人それぞれの「~向き」がありそうです。
自分に合う「~向き」に出会いたいです。
まぁおそらく「~な後ろ向き」みたいに形容詞が付いた後ろ向きになりそうですけど…。


まぁそんなことを思いながらも、いつも明るく笑顔の人は良いですよね。
なかなか自分がそうなれない事もあり、憧れたりします。

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前置き長いですが…本の紹介です。

西加奈子「ふくわらい」(朝日新聞出版)

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著者の文章は細やかで、そして句読点の独特な打ち方からリズムを感じます。
テンポを感じたり、前のめり後ろのめりを感じます。


タイトルの「ふくわらい」は、主人公の女性・鳴木戸定が幼少より親しんでいた子供の遊び、福笑いからきているようです。

自由に目や鼻や口を移動させながら、もともとの顔から離れる事で起こる不自然さや滑稽さを楽しむ福笑い。

大人になった定は、仕事で出会う人や街ですれ違う人の顔をみながら、それぞれのパーツの配置を自由に動かしたり取り換えたりします。そして、その個人を形成する上で大切な顔について興味をより深くしていきます。
しかしながら一方では顔も肉体も一つの皮膚でつながっただけのもの。顔だけに特異性を見いだすことは何だろうと考えたりもします。
そして自分や他人って 、その人そのものって何だろうとかとも考えます。


魅力的な登場人物たちが描かれています。


同僚の木暮しずくは、親しくなって間もない定に「私にとって、今の定ちゃんはすべてだよ、そんで、それは先っちょだよ」と言う。

人を知ることは、その人の過去全てまでを知ることまでは難しい。だからさきっちょだけが全て。
自分が他人を見たり、触れたりする顔や言葉。
重ねた時間から表出する僅かなさきっちょだけが全て。


新宿で偶然出会った盲目の武智次郎。目に見えない定を美しいと言い、定を抱きたいと思う。
その想いをかなえようとして「さきっちょだけ」と、はしたなく“聞こえる”言葉を言う。

今まで歩んできた長い時間を経て、触れ合うさきっちょ同士。
それだけで伝わること。自分と外を隔てる薄皮一枚 。
その先端にいる自分と他人。触れるだけで感じること。


プロレスラーの守口廃尊。傷を負いながらプロレスを続け、一方では文章を書く。
「言葉を組み合わせて、文章が出来る瞬間に、立ち会いたいんだ」「プロレスが怖くて、言葉に逃げてるんだ」と言う廃尊。定は「守口さんは、言葉を愛していらっしゃる」と答える。

定の言葉にほどかれた心は、いつか廃尊が自分を認めることにつながっていく。



定は自分と他人の顔や体も、全体が自他そのものである、と認める。
そして、その認知が自己のアイデンティティの回復に繋がっていく。
その時、定の中で福笑いは静かに離れていく。


武智次郎の振り回す白杖の作る美しい軌跡がきらきらと光っている。


他人から与えられたら言葉が、いつか自分の言葉になる。

無限の組み合わせの言葉は、無限の組み合わせのふくわらい。
与えた言葉や、言葉じゃないものが人に伝わったとき、「機微をしらない」「友情をしらない」と言った定の心に自己回復を辿らせていく。

そして自分や他人の「さきっちょ」から出た“ホニャララ”は、
さきっちょだけで充分に伝わるものだと知る。

だから自己を偽る必要もなく、あるがままで良いと知る。
もちろん、それが他人にどう思われるかは別として、です。



今日はこの辺で以上です。

更新は毎週月曜日。次回は12月16日です。

読んで頂きありがとうございました。
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by mamesyakuhachi | 2013-12-09 10:43 | 西加奈子 | Comments(5)