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「世界の8大文学賞」で海外の現代文学に親しんでみる。



ボブディランがノーベル文学賞を取りましたね。

意外な受賞者に驚いた方も多いと思います。(僕もそうでした)

ところで海外の文学賞って、日本での知名度でいえばノーベル文学賞がダントツですよね。
でもノーベル文学賞以外の賞はあまり知られてないと思います。

世界の文学賞って何があるんだろう?
今週はそんな事を知るための本を紹介します。

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「世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今」都甲幸治、他(立東舎)

この本ではノーベル文学賞の他に

ブッカー賞(イギリス)
ゴンクール賞(フランス)
ピューリツァー賞(アメリカ)
カフカ賞(チェコ)
エルサレム賞(イスラエル)
芥川賞(日本)
直木賞(日本)

を取り上げています。
(芥川賞と直木賞が入ってるのは日本で最も有名な文学賞だから、という位置付けみたいです。)

ピューリツァー賞って報道写真の賞だと思ってましたが、文学や音楽にも与えられる賞だったんですね。
知らなかった。

ちなみに毎年村上春樹がノーベル文学賞候補になる一つ理由というのが上記カフカ賞と関係しています。

2004年のカフカ賞受賞者はオーストリアのエルフリーデ・イェリネク。イェリネクはその年にノーベル文学賞も受賞。
そして翌年の2005年、今度はイギリスのハロルド・ピンターがカフカ賞を受賞し、その年にノーベル文学賞を受賞。
二年連続のことだったので、カフカ賞はノーベル文学賞に近い存在と言われるようになったみたいです。
そして2006年の受賞者が村上春樹。村上春樹はその年にノーベル文学賞は受賞しなかったものの、カフカ賞受賞がきっかけになり毎年ノーベル文学賞候補なんて言われるようになったみたいです。


話が少しそれましたが、本書「世界の8大文学賞」について。
この本は文学賞を簡単に説明したあとに、受賞作を専門家が読書会形式で分析していきます。

この本の最大の魅力は、文学賞の位置付けや格付けを知ることよりも、なじみの薄い海外の現代文学に目を向けるきっかになる、という点だと思います。

たとえば本書の中で、僕が一番興味を持ったのがイギリスのブッカー賞。

ブッカー賞は選考方法が優れていて、例えば良い3点を列挙すると、

1、選考委員が毎年かわるため、癒着が起きにくい。
2、審査員が作家だけでなく、評論家、引退した政治家、さらに文学好きの芸能人と幅広い。
3、百冊以上の候補作を選考委員が全部読む。(通常の文学賞では、最終選考の数作品を読むだけ、というのが多い)
などなど。

賞の信頼度は高そうです。
本書で取り上げられているジョン・バンヴィル(アイルランド出身。2005年に『海に帰る日』でブッカー賞を受賞)の作品は読みたくなります。

書評家の江南亜美子は本書の中でバンヴィルについて、

バンヴィルは、記憶のなかの出来事を固着した情報として塊のまま描くのではなく、ある揺らぎとともに描き出すんです。思い出していく過程で、記憶がどんどん変わっていく、その生っぽさを捉えるのがうまい。

と評していて、バンヴィル作品に俄然興味が湧いてきます。

ちなみにこの本では「今後受賞して欲しい人」というミニコーナーもあって、

なんと、ノーベル文学賞の欄でボブディランを挙げている方がいました。

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挙げているのは中村和恵(詩人)です。
本書の発行は先月の9月23日。
すごい。

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今週はこれにて以上です。
更新は毎週月曜日。
次回は10月31日です。

読んで頂きありがとうございました。







by mamesyakuhachi | 2016-10-24 00:01 | 都甲幸治